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くろいぬ日記

黒犬ニッキー、アリゾナ育ちの東京暮らし。

2001年12月の日記

■2001/12/31 (月) 今年もおしまい

 ほんとうにありがとう。
 今年前半は病院通い、そして後半は激動の半年を送った。
 祖母を亡くしたり、恩師を亡くしたりしたけれど、出会いも多い年だった。数年間音信不通だった方との交流が再開したり、友達の紹介で意外な方と知り合ったり、遠く関西やアラブ(関西とアラブは遠さが違うけど)の方とお会いしたり、マスコミの方と縁があったり。
 そして、その殆どの出会いが元を辿ればネットにつながっていた。とにかく誰かに日本語で話したい! と留学中につくったホームページが、こんなふうに人の輪を広げている。なんだか、感慨。
 もちろん(と言い切るのも淋しいけど)、全ての出会いがニッキー絡み。ニッキーと一緒に日本で当たり前に暮らしていきたい、というささやかな願いを後押ししてくれる沢山の人達に知り合えた。いちばん嬉しかったのは、ニッキーをきっかけに新しい介助犬が生まれようとしていること。
 夢見たことが現実になり、夢にも思っていなかったこともまた現実になった。
 来年は…みんな元気でいられればそれでいいや。ニッキーも猫たちも、友人や家族や大切な人達も、みんな元気でいてくれれば。

■2001/12/30 (日) つんつん

 パソコンに向かっている私の右腕の下に頭を入れてきたり、鼻先でつんつんしてみたり、今日のニッキーはいつにもまして甘えん坊。普段はあまり自分の要求をストレートに表現しない子なのに、わざとこっちの仕事を邪魔して注意を引こうとする。
 退屈しているのかと思って、おもちゃを隠して探させたり、簡単な仕事をさせてオーバーに褒めたりして室内で遊んだ。いつもなら満足してそのまま寝てしまうのだけれど、今日はしばらくしてもう一度鼻先つんつん・愛の頭突き攻撃が再開された。何か要求があるらしいけど分からない。
 この間の聴導犬のデモで見たのを真似して、動作付きで「なぁに?」と聞いてみる。立ち上がる振りをして2度聞いてみたら、ニッキーは私を自分のハウスに連れていき、食器を鼻でつついてうるさく鳴らしてみせた。「ご飯よこせ」のサイン。
 ねぇニッキー、ちゃんと2回ご飯を貰ったのに、忘れちゃったの?
 ここ数日帰りが遅かったから、遅い時間にご飯を食べる習慣がついちゃったのかな。まさか…ぼけちゃってご飯を食べたのを忘れてるんじゃないよね。

■2001/12/24 (月) クリスマスプレゼント

 ニッキーからのクリスマスプレゼント。
 それは、初めて駅の階段で一歩ずつ昇り降りを介助してくれたことと、いつもはタクシーで帰るJRの駅から我が家までの道程を、時々車椅子を引っ張り、時々邪魔にならないように車椅子の後ろに回り、段差では頑として進まずに、一緒に歩いてくれたこと。

 エレベーターがない駅では、普通駅員さんが4人がかりで車椅子を持ち上げてくれる。そうできない時は、お客さんの力を借りたり、車椅子だけを先に運んでもらって手すりをつかんで階段を上ったりする。
 いつもは両手で手すりにしがみつくけれど、右手に手すり・左手にハーネスで、時間をかけて階段をクリアした。体高の不足は、ニッキーが少し上の段を歩くことで解消できる。
 電車を降りてから家までは、坂道と、歩道の整備が悪い場所と、段差があって、ニッキーがいてくれなければ車椅子で歩ける道ではない。タクシー代が片道1800円くらいの距離を、天気のいい午後、ふたりで2時間以上かけて歩いた。
 緩やかだけれど長い坂では車椅子を引いて颯爽と走り、狭い歩道で私が立ち往生した時もじっと側にいてしっぽを振り、段差が高すぎて危ないと判断したら絶対に私を進ませなかった。
 家に着く少し前に、急な長い坂がある。ここでは私が両手で車輪を動かし、ニッキーがハーネスに車椅子を繋いで斜め前を歩いて補助した。途中でブレーキをかけて休むこと数回。押しましょうか? と声をかけてくれる人に「ありがとう、でも介助犬がいるから大丈夫です」と答えて、とうとうふたりで歩きとおした。

 たったそれだけ。
 でも、今まで諦めていたことを実行させてくれたニッキーが頼もしかった。
 帰宅した時には腕が上がらなかったし、指も伸びなかった。もしも介助してくれたのが人間だったら、こんなになる前に車椅子を押してくれたり、タクシーを呼んでくれたりしただろう。それが悪いとは思わないけれど、たまには「自分で出来る」気分を味わってみたい。
 ありがとうニッキー。

■2001/12/21 (金) 積もらなかった…

 雪が積もったらお手上げなんだけど、天気予報で積もるって聞いていたので、ちょっとがっかり。うちのあたりは都内が雨でも雪になるところだから、絶対積もると思ったのになぁ。
 雪が降らなくても恐ろしく寒かったので、根性無しの私とニッキーは予定通りこたつで読書三昧。電話をかけてきた友達3人がみんな「どうせこたつで丸くなってるでしょ」と正確に言い当てた。
 そこへ、集金がやってきた。寒いと余計に足の自由が利かないし、真冬専用の厚い靴下が滑りやすいので、ニッキーの背中に手をついてバランスを取りながら応対する。私の姿勢がおかしいのと家の中に杖が沢山あるのを見て、集金の人は「足が悪いんですか」と軽く聞き、ラブラドールのニッキーと見比べて「おお、君は介助犬かぁ」と言った。ほー、よく分かったね、集金さん。
 ニッキーの助けを借りて台所の椅子に座り、「Get the purse(財布を取って)」と頼んで奥の部屋から財布を持って来て貰った。更に集金さんにお札を渡して、おつりを持って来て、最後に領収書も受け取るニッキー。この手の仕事は苦手なのに、今日は二重丸。
 そこで初めて集金さんが驚いたように聞いた。
「えっ、この子本当に介助犬だったんですか?」
 何だか一気に力が抜けてしまうひとことに、この寒いのに笑わせて頂いた。

■2001/12/20 (木) 読書

 天気予報で明日は雪らしいと聞き、急いで買い出しに行った。ついでにインターネットで注文しておいた本をコンビニに取りに行く。明日が雪だったら、家でこたつに入って読書三昧しようっと。
 小学生の時図書館で読んだ『ロバータさあ歩きましょう』が、文庫で復刊しているのを知って取り寄せてみた。著者の佐々木たづさんは視覚障害者。日本で盲導犬が育成されていなかった時代に、イギリスへ渡り盲導犬ロバータを得て帰国した。失明からロバータとの生活までの手記である。
 ずっと恵まれた時代の気楽なショウガイシャとわがまま介助犬の体験と、重ね合わせたりしては失礼なのだけれど、ちょっとめくって見ただけでも、意外に沢山共感する部分があるのに改めてびっくりしてしまった。
 そして、新しい環境での練習の仕方・道を歩く時のコツ・指示の出し方に褒め方叱り方…と歴史の浅い介助犬ではまだまだ確立されていない部分で、ほんのちょっとした記述の中に宝物が隠れている。もちろん、宝さがしをし、ちゃんと磨いていくにはこちらにもそれなりのものが必要だ。1冊の本が、小学生の私と三十路の私にとって全く違う本になってしまったんだなぁ、などと思ったりして。
 昔読んだ記憶の中には残っていなかったこんな文章も見つけた。
 ――〈ともに訓練をうけた犬と人〉とのあいだのかたい信頼の姿に心をうたれ、〈犬と人とをあわせて訓練する〉この過程こそが、必要かくべからざるものなのだ…(『ロバータさあ歩きましょう』佐々木たづ著・偕成社文庫)

■2001/12/19 (水) 育ってる

 当たり前なんだけど、実家に戻るたびにちび猫たちは成長していてびっくりする。ついにギギがリズより重くなっていた! 拾った時はリズよりずっと小さくてやられっぱなしだったのに。
 ギギの毛色はなかなか味がある。全身殆ど真っ黒に見えて、実は濃い灰色と黒の縞模様。毛の根元の方は白いので、時々白っぽい部分が現れる。そんな毛色のギギがだんだん真ん丸に肥えてきて、立ち上がったら鉄人28号みたい。ちなみにしっぽはアンモナイトに似ている。
 拾った時にはあまりの不細工さに笑ってしまった。ちっちゃい身体で子猫らしくないところもあったのだけれど、今思えば、多分栄養不足で発育が遅れていたんだろう。リズよりひと月くらい小さいかな、と思っていたら同じ時期に歯が抜け替わり、いまやリズよりでっかくなってしまった。背丈も足の長さもリズの方が長いのに、骨太でかたぶとりのギギは幅があって重たい。
 そんな訳ですっかり3枚目が定着してしまったギギだけれど、来たばかりの頃、遊ぶ余裕もなくただひたすら餌を待っていたことを思えば、ここまで成長してくれてよかったと思う。毎日のご飯の心配がなくなって、子猫らしくじゃれて遊ぶようにもなった。
 紙屑相手に黙々とひとり遊びを続けるタイプのギギに、クリスマスには猫用おもちゃをプレゼントしてあげたいな。高いところが大好きなリズにはよじ登れるものを、ニッキーには毛布をあげようと思っている。

■2001/12/15 (土) 電車その後

 火曜日の初乗車から、何度か単独乗車している。単独=介助の人も犬のリードを預けられるトレーナーやボランティアもいない状態。
 許可を貰うのが目的ではない。犬を連れ歩くのが目的でもない。介助犬の世話をするために付き添いが必要では困るのだ。ニッキーとふたりきりで電車に乗れるようにならなくちゃ。
 テストの時はほんとに行儀がよかったニッキーも、相棒の私の気持ちが緩むのに比例して緊張感がなくなって来た。ドアが開くたびに鼻と耳としっぽが動いて立ち上がりたそうにしているのが分かるから、Stayの指示を時々繰り返す。最初はホームと電車の隙間をジャンプしてしまい、結構危なかったけれど、いつの間にか落ち着いて車椅子に合わせた乗り降りを身につけている。
「バリアフリー」が流行語になったせいかホームと電車の間に補助板を渡してくれる駅も多い。エレベーターも随分増えたし、階段用のリフトは以前から結構普及していた。エレベーターはともかく、この手のリフトや補助板はニッキーにとって初体験だった。リフトが動き出した時はかなりびびっていたので笑えた。
 エレベーターもリフトもない駅では、駅員さんが4人がかりで私の車椅子を持ち上げて運んでくれる。これもまたニッキーには初体験。最初は駅員さんにリードを持って貰おうかと思ったが、何しろ分離不安が強い子なので、飼い主から離されると思って吠えたりしたら大変だ。持ち上げられながら私がリードを持った。
 ニッキーがリードを引っ張ったり駅員さんにぶつかったりしたら、私は階段を落ちて怪我をする。内心その覚悟をし、最悪の場合は頭を打って網膜剥離を再発することまで考えたのだが、意外にもニッキーは適当な距離と場所を自分で判断して、うまくついてきてくれた。
 エレベーター・スロープ・補助板・リフト・そして駅員の階段介助をクリアした今、日本の駅に怖いものはない。残る問題は…よっぱらいのげろに遭遇した時上手に避けてくれるかどうか、それから、鳩のいる駅で鳩に気を取られないかどうか、だな。

■2001/12/14 (金) タクシー無線

 さっき、駅からタクシーで帰宅した私とニッキー。車内に乗り込んだ途端、偶然にも無線で「盲導犬を乗せたら車が毛だらけになった」という言葉が聞こえた。どきりとした。
「毛が沢山落ちたよ。ブラシぐらいかけてないのかね」
 どれくらいの抜け毛を「沢山」と感じるかは人それぞれにしても、本当に嫌そうな声だった。多分この人は犬が嫌いなんじゃないか、とも思った。嫌いなものを好きになれとは言えない。
 もし本当に、ブラシもかけないユーザーがいたらそれは非難されるべきかもしれないけれど、運悪く犬嫌いな人と、犬の手入れが下手なユーザー(もしかしたら洗い立てで毛が抜けやすい状態の盲導犬?)が出会ってしまっただけなのかも。
 この無線を聞いたドライバーやタクシー会社の人がどう思うのかが心配だ。「盲導犬ユーザーは目が見えないから犬の手入れも出来ない」と思って乗車拒否する人が増えたら悲しいと思う。勿論手足の不自由な介助犬ユーザーに対しても(乗り込みを介助したり車椅子を積んだりする手間があるから余計に嫌われそう)。
 そしてもっと悲しかったのは、その次に続いた言葉だった。「情けをかけて損したよ」と、はっきり無線のドライバーは言った。
 盲導犬を乗せることって、「情けをかける」こと? 目の見えないお客が白い杖を使っていても盲導犬を使っていても、目の見えるお客と同じように乗せるのは当たり前じゃなくて、「情け」なの?
 日本のバリアフリーってこの程度なのかな。3年ぶりに日本の電車に乗って、駅のバリアフリーが進んでいるのにびっくりしたんだけど、結局「カタワに情けをかける」「自分より弱い人に手を差し伸べる」という感覚は変わっていない気がした。最初から乗車拒否をする方がずっと対等な手段だ。
 今日はちょっと悲観的な気分。ま、一瞬でも「こいつ事故れ!」と思った私は、「情けをかける」ことも出来ない、更に根性の悪い人間だけれど。

■2001/12/10 (月) 小心者だから

 散歩兼買い物・駅の周辺コースには、上り坂でさらに歩道に登るという難所が何ヶ所かある。道の傾斜に歩道の端っこの傾斜が加わって角度が急になっているし、歩道との境目がちょっと段差になっているので、車椅子でクリアするには腕力と技術が必要だ。
 ちなみに坂や小さい段差は、軽くて動きやすい最近の車椅子より、アルミ溶接で前輪が大きい旧式のものの方が安定していて楽。そう、我が愛車は安くて丈夫で鈍くさい、昔ながらの車椅子である(自慢してどうする?)。
 この手の難所で、車椅子を引いてくれるニッキーは本当に頼りになる。ハーネスを握っていれば転ぶ心配もない。私が車輪を動かすのに合わせて、絶妙のタイミングで引き上げてくれる。二人三脚で訓練を乗り越えた分、お互いの息はぴったりだからね。
 ところが今日は一ヶ所でうまく上がれなかった。まず私が段差に前輪を乗せる。ニッキーが身体を寄せてきて、左手でハーネスを握る。右手で思い切り後輪を押し出しながら、Forward! の指示を出す。その時に、車輪が小さな窪みにはまって空回りしてしまった。
 私が失敗してもニッキーが強引に引っ張ればなんとかなると思うのだが、相棒を気にするニッキーは、あれ? の顔になって振り返り、止まってしまう。そうでなければ何かに前輪が引っかかった時にひっくり返るから、そこで自主的に止まるのは介助犬として正しい判断なのだけれど。
 二度失敗したところで、通りがかった人が「手伝いましょうか」と聞いてくれた。「いいえ、大丈夫です」ニッキーのしっぽがまだ力強く振られていたので、手助けを断って続ける。車椅子の方向を少し変えてトライしてみても、三度目の失敗。しっぽの勢いを確かめて、もう一度。
 四度目に、ニッキーは一気に全力で私を引っ張り上げてくれた。車椅子も引っかからず、無事に難所を通過! テレビに出てきそうな感動的な場面だった。英語と日本語まぜこぜ&オーバーアクションのアヤシイ外国人状態で褒めまくった。えらいぞニッキー!
 それなのに、感動で涙ぐみそうな私をよそに、ニッキーは突然植え込みの匂いを嗅ぎ始めた。家を出る時にしてきたのにどうしてもおしっこがしたくなった様子。
 多分、失敗を繰り返して緊張したんだと思う。介助の技術は進歩したけどやっぱり小心者な奴だった。

■2001/12/08 (土) やっと

 届いた。契約書と「介助犬同伴承認通知書」が、JRから。これでやっとJR東日本・東海・西日本に、実際にニッキーと一緒に乗れることになった。
 今までニッキーと出かける時は、誰かに車を出してもらうしかなかった。みんな「気にしないで頼んで」と言ってくれたけれど、お願いするには必ず理由が必要だ。「訓練のためにどこそこへ行く」「何々のイベントに参加する」――ちょっと行ってみたいお店がある、とか、あそこに遊びに行きたい、ではなかなか人に頼めない。
 これからは、ニッキーと一緒に大した理由のない外出が出来るようになる!
 私は早速、ガイドブックを買って来て、我が家からJRで行ける・介助犬入店可のメキシコ料理店を探した。半日かかってやっとニッキーと行ける店が見つかった。日本はメキシコ料理店自体が少ないのかな。
 アリゾナの郷土料理はメキシコ料理なのだ(なんか変だけど)。乾いて暑い気候にサルサの風味やトルティーヤが合う。留学中に餃子やお寿司が食べたくなったのと同じように、帰国してしばらくしてから無性にメキシコ料理が食べたかった。
 タコ、ブリトー、ファヒータ、エンチラダ、タマレス、ナチョ…懐かしい味が待っている?!

■2001/12/06 (木) 寒がりなのに

 アリゾナはあったかい。冬でもせいぜいTシャツの上にジャケットを羽織るか、トレーナー一枚でOKだった。今頃はクリスマス一色にディスプレイされたショッピングモールを、半袖の人達が歩いてるんだろうな。雪だるまが飾ってあるのに冷房が入ってたりするんだよね。
 で、そんな場所で育った(?)私達は寒がりだ。「猫犬」の異名を持つニッキーは、エアコンの温風が直接当たる場所に寝ているし、風邪気味の私も部屋の中で厚着して過ごしている。
 今日の東京は寒くて私の手もうまく動かないので、短い散歩だけにして、買い物に行くのもやめてしまった。その代わり、ニッキーには室内でちょっとしたゲームとトレーニング。スニーカーの紐を解いてから、かかとをくわえ直して脱がせるまでの練習をした。
 この技は練習を始めたばかりなので、下手でも褒めまくる。ニッキーさんは大変満足したご様子で、スニーカーをくわえて部屋を一周し、しっぽをぶんぶん振った。今思えばこの時、やる気スイッチが入ってしまったんだろう。
 ご飯も終わって、ゆっくりテレビを見ようかな、と思った時、うっかり私がハーネスに足を引っかけてしまった。ハーネスの金具が、ちりん! と鳴ったのを聞きつけたニッキーが、この寒いのにハーネスに頭を突っ込んで「行くぜぇ〜っ!」と気合いを入れている。
 やる気スイッチが入った途端に寒さに強いラブラドールの顔になる「猫犬」君だった。。。

■2001/12/04 (火) またもや、やってしまった

 ああ、日曜日タクシーでミスをしたからしっかり訓練しなきゃと思っていた矢先に、失敗してしまった。異常に車好きのニッキーが、アパートの前で別の人を迎えに来てドアを開けたデイケアセンターのバンに勝手に飛び乗ってしまったのだ。
 玄関の外にある洗濯機を回している(雨なのに・笑)私の足元でぼんやりしていたニッキーは、車椅子対応の車を見て、一緒にお出かけするものと勘違いしたらしい。
 慌てて泡だらけの手で引きずり降ろそうとしたけれど、周りに人が沢山いるので強くは叱られないと思ったのか、いやいやをして素直に降りてこない。こんなことで「言うことを聞かない」「勝手に行動する犬」と思われたら、これからの生活にも介助犬全般のイメージにも影響がある。第一いくらハーネスを着けていなくても、犬自身の危険につながる行動は絶対にいけない。
「ノウッ! いい加減にしなさい!」力いっぱいマズルをつかんで叱ってから、犬を無視して車から離れた。叱られていることと私が行かないことが判ったら、ニッキーはしょんぼりとうなだれて、頭もしっぽも下げて車から降りた。そのしょげ方は、今まで見たこともないほど。
 大好きな車に乗れない・お出かけ出来ない・人前で叱られた・そして相棒が本気で叱っている…ニッキーは雨の中しっぽを下げて固まっていた。私の側に寄ってくることも出来ず、ほんとに泣きそうな顔をしている。
 しばらく犬を無視した。叱る時の基本。必死になって仲直りのチャンスを探しているニッキーがいじらしかった。そっと私の視界に入って、目をあわせずに座ってみたりして。
 こんなに叱ったのは本当に久しぶりかもしれない。叩いたり怒鳴ったりした訳ではないけれど、ニッキーのショックはかなりなものだったと思う。無視だけでこんなにこたえてくれるのは、主人として大事に思われている証拠だから嬉しいけれど、それ以前に叱られないように、病的なまでの車好きを何とかして欲しい。
 無事仲直りして、妙にべたべたしているけど…ニッキー、今度実家に行ったら特訓だよ。

■2001/12/03 (月) 爆睡犬

 初めてのタクシー、デモ見学、デパート内での仕事、初めての喫茶店でステイ、と昨日のニッキーは(多少の失敗があったけど)お利口にしていたので、ご褒美に今日は彼の休日にすることにした。
 公園でハーネスを外して、ノーリードのボール遊び。平日の昼間で人間の子供も犬もいなかったので、好きなだけ走らせた。ボール投げ・探し物ゲーム・散策と匂いかぎ。楽しそうなニッキーを見ていると飼い主もほっとする。
 実は昨日、デパートで「すごいねぇ、遊ぶのも吠えるのも全部我慢して、人間のために働いてるんだよ」という声が耳に入ったのだけれど、ほらね、この子は犬らしいやんちゃも遊びの時間もちゃんと持っているでしょ。
 ニッキーも来月で6歳になる。いつのまにか口のあたりが色褪せて来た。ノーリードで遊ばせても、ツーソンにいた頃よりずっと早く遊びを止めて戻って来てしまう。疲れるのがちょっと早いかな、と思いつつ、家に戻った。
 昨日は頭を、今日は身体を使って疲れたニッキーは、自分のハウスに丸くなって爆睡。いつもなら相棒が移動するのに合わせて、寝室・こたつの部屋・キッチンを移動しながら寝るのだけれど、本気で寝ている。いびきまで聞こえるし。
 ニッキーが仕事をしてくれ、楽しそうに遊んでくれ、ふたり暮らしを続けられるのはいつまでなんだろう。今はとってもしあわせなんだよね。ありがとうニッキー。

■2001/12/02 (日) お出かけ〜聴導犬さん達に会ったよ〜

 地元に聴導犬のデモンストレーションがやってきたので、ニッキーと一緒に見に行った。聴導犬の仕事は知っているけれど、やっぱり実際の犬達と育成現場の人達に会うのは勉強になる。まして今回はネット友達のはなべ〜さんちのはなちゃんがデモに出演するんだもん、見に行かなくちゃ!
 場所は某デパート。タクシーで行くことにしたので、ニッキーには日本のタクシー初体験となった。毛が落ちないようにブラシをかけているところで、電話で頼んでおいたタクシーが到着する。まだハーネスもリードも着けていない。
 ノーリードのニッキーは、タクシーのドアが開くのを見てダッシュ! さっさと飛び乗ってしまった。ほんとに車好きなんだから。慌てて呼び戻し、ハーネスとリードを着けて出発。15分ほどずっと足元に伏せていた。

 介助犬入店可の某デパート屋上は、天気がよかったので黒犬には暑いくらいだ。屋内に比べて音が散りやすく、すぐ側がペットショップでいろんな匂いがあったのに、デモ犬達はきびきび音を教えていた。
 ここの協会は完全に陽性強化法、オペラントのみを使って訓練するそうだ。日本だと珍しいかも。ちょっとアバウトで嬉しそうに仕事をするデモ犬達を見ていたら、アメリカで会った沢山のアシスタンスドッグ達を思い出した。
 はなちゃんも頑張っていた。足に問題があって聴導犬になれなかったはなちゃんは、現在家庭犬。聴導犬協会のボランティアという「仕事」を家族全員が楽しんでいるお宅に引き取られたはなちゃんは今、家族の一員としてその仕事を手伝える誇りを感じているんだろう。本当に楽しそうだった。
 ニッキー共々何故かなれなれしくスタッフの方達にご挨拶して、リードの購入先まで聞いてしまった(笑)。みなさんありがとう!

 その後デパート内を散策&軽い食事もした。ニッキーが物を拾ったり、エレベーターボタンを押したり、ふつーに座ったり伏せたりするだけで「あらーお利口」なんて声が聞こえるから、生介助犬はまだまだ珍しいらしい。
 注目を浴びていいとこ見せようとしたせいか、聴導犬協会の人達に愛想を振り撒きすぎたためか、帰りのタクシーに乗り込むなりいびきをかいて寝ていたニッキー、今日の君は沢山の訓練と仕事をこなしたんだね、お疲れさま!

■2001/12/01 (土) お手バトルふたたび

 やってしまった。去年某掲示板で笑って頂いた「お手バトル」の再開である。
【「お手バトル」はもともと、コンビニAのレジでバイトのおにいさんにお手をしようとするニッキーと、お手をかわそうとするおにいさんの勝負だった。お手をされてしまったらわざわざ手を洗いにいかなければならないおにいさんも、結構真剣にフェイントをかけたりして、笑えたのだ。】
 今日の昼、コンビニBで買い物をしてお金を払う時、ニッキーにお財布をくわえて渡してもらおうとしたけれど…Getで財布をくわえ、Upで立ち上がったまではよかったのに、何を思ったかコンビニのおばちゃんに財布を渡そうとしない。
 実はニッキー、この仕事が結構苦手なのだ。時々「相棒の大事な財布、あんたに渡すもんかい!」とやってしまう。多分、受け取る側の態度にちょっとでも遠慮があるとそうなるんだろう。「大きな犬ねぇ、真っ黒ねぇ」なんて言っているコンビニのおばちゃんは、ちょっとどころかかなり遠慮した感じで控えめに手を出し、財布を受け取ろうとした。
 その時。
 差し出された手に、こともあろうに力強くお手をしたのだ、仮にも介助犬のニッキーが…。お手というよりパンチに近かった。大事な財布を渡したくないあまり、相手の手を押さえこんでしまったらしい。慌ててDrop!(その場で放しなさい)と指示して財布を放させたけれど、おばちゃんは0.5秒ほど固まっていた。
 渡す時はしぶったくせに、お金を取っておつりを入れた財布を返してもらう時は素早い! 思いっきり首を伸ばして、おばちゃんの手から財布をもぎ取るようにGetした。「取られちゃ大変、早く返せっ!」――ああ、なんという余裕のないけちくさい態度。こんな犬に育ててしまった私も、相当な貧乏性なんだろうな。
 お手バトル2001、おばちゃんとニッキーの勝負はまだまだ続く…のか? 次回は必殺おかわり攻撃が出るかもしれない。

(C)Yuki+Nicholas, http://blackdog.whitesnow.jp/