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くろいぬ日記

黒犬ニッキー、アリゾナ育ちの東京暮らし。

2003年3月の日記

■2003/03/30 (日) 安上がり

 職業柄、普通の犬が入れない場所にもお邪魔することの多いニッキー。それなのに、この子は黒ラブ特有の体臭が強く、ふけも出やすい。そしてこの時期は、抜け毛の嵐である。
 対策として服を着せることが多くなった。服を着せても体臭や抜け毛が全てカバーできる訳はないけれど、「服を着せて、ちゃんと気をつけていますよ」というアピールになる。でも、ニッキーはハーネスに力をかけて車椅子を引くから、ハーネスの下に着せる服には気をつけなければ、皮膚を傷めたり、ハーネスがずれたりしてしまう。それに、無地で何の変哲もないデザインのものってなかなかない。
 アリゾナに里帰りした時は、デニム地のシャツを買ってみた。セール品で16ドル99セント。ジーンズの飼い主とおそろいになるので、デザイン的にはとっても気に入っていた。でも、シェパードで型紙をとったというその服、ラブラドールのニッキーには胸の部分がきつくて、駅の構内で突然マジックテープがばりばり外れ、デビルマンの変身みたいになってしまった。
 その他、首の辺りが着崩れた芸者さんになったり、中途半端なスカートになったり。背中にロゴがあったり、帽子やリボンが付いていたりするのも、介助犬の制服には不向き。不器用な私には、いろいろ直したり縫ったりするのもちょっと…。
 と試行錯誤の末、今日ふと入った某激安カジュアルショップで、子供用の無地のTシャツを見つけた。「この子に着せたいので…」と言うと、嫌がられるかと思ったのに、快くいろいろなサイズを出して、「犬はきつくても言えないから、人間の子供さんよりよっぽど気をつけて選ばないとね」と、時間をかけて合うサイズを見つけてくれた。
 帰ってから着せてみると、今まで着せたどの服よりもぴったり。おしりをカバーできないのが難点だけれど、適当に伸びる生地がうまくニッキーの身体に合い、犬用と言っても通用しそうだ。ちなみに、服を着せるときは撫でられているのと同じと感じるのか、全身の力を抜いてぐたーっと身を任せるニッキー、着せるのも脱がすのもとっても簡単。
 3着で990円也。大型犬用の服に比べたら、オソロシイ安さである。高い犬用の服を一生懸命探していた私の努力はなんだったんだろう。ニッキーって結構安上がりな犬だったのね。

■2003/03/17 (月) あせった…

 今朝の東京は雨。ニッキーは濡れないように、屋根のあるコンクリート部分で用を足した。土の部分よりうんこが拾いやすいので、私は大助かり。
 ニッキーの排泄物は、ビニール袋で拾ってごみに出すか、紙とビニールの袋が2重になった袋を使って、人間用のトイレに流すかにしている。トイレに流せる袋はとっても便利だ。でも…ちょっと小さすぎるような気もする。大型犬サイズを作ってくれたらいいんだけどなぁ。
 結構長時間我慢していたので、今朝のうんこは大変ご立派だった。無事回収し、内側の紙袋と一緒に水洗トイレへ。いつもどおり水を流すと、なんと! ご立派なうんこがなかなか流れず、水が便器のふちまで上がってきてしまった。直接トイレに落ちたものなら1本ずつ流れるが、袋にまとめられているので、流れにくいのだ。幸いそのまま流れて行ってくれたけれど、危なかった。
 本当にあせった。以前は猫砂がトイレに詰まって大変な目に遭ったけれど、今度は犬のうんこ…やっぱり人間用トイレは人間専用なんだなぁとしみじみ思った私だった。

 そして午後。ニッキーの耳掃除をする。洗浄液をしみこませたティッシュで、耳の中をぐにぐに。耳掃除が大好きなニッキーはうっとりと目を閉じていた。
 ラブラドールの大きな耳は、ティッシュが一枚、すっぽり入ってしまう。洗浄液のしみたティッシュをしばらく耳の中に入れておき、「はい、ぶるぶるして」。ニッキーはいつもどおり頭をぶるぶる振った。ここまではいつもどおり。
 ぶるぶるし終わったニッキーの耳からティッシュを引き出そうとした時、あろうことかティッシュが途中でちぎれ、耳の中から出せなくなってしまった。ニッキーは気持ち悪いのか畳に耳をこすりつけはじめ、ティッシュはどんどん中に入っていってしまう。
 私は大慌てで、先の丸い毛抜きでティッシュをつまもうとした。ニッキーにステイをかけ、緊張しながら…。
 またまたあせった。万が一本当にティッシュが出てこなかったら、獣医さんで取って貰うしかないと覚悟を決めた。
 そのうち、くすぐったくなったニッキーが猛烈なぶるぶるをし、その勢いでティッシュが飛び出してきた。ああ、よかった!
「にっちゃん、グッド・ぶるぶるだったね」
 ステイの最中に頭を振ったのに、何故かとても褒められて、機嫌のいいニッキーだった。


■2003/03/13 (木) ひと部屋の法則

 ニッキーには、自分で勝手に決めたルールがいくつかある。そのひとつが「ひと部屋の法則」。
 私のアパートは、小さなキッチン(お風呂とトイレのドアがある)と4畳半、6畳という間取りで、ニッキーのハウスは4畳半の隅にマットを敷いて、水入れを置いてある。このハウスは、アパートのほぼ中心の位置だから、私が何をしていても、ハウスから観察できるはず。犬なんだから、姿が見えなくても音やにおいで私が何をしているかは分かるだろうし。
 と思っていたけれど、何故かニッキーは、私がキッチンにいればキッチンに、6畳にいれば6畳にいなければ気がすまないらしい。名づけて「ひと部屋の法則」。ちなみに、私がトイレに行っても特に追ってこないけれど、お風呂の時には必ず足拭きマットの上に丸くなって待っている。
 今日は、窓から日差しが入る場所に、気持ちよさそうに丸くなっているニッキー。出来れば起こしたくなくて、そーっとキッチンに移動した。ニッキーはよく寝ていたので、ついてこなかった。
 ところが、洗っていたペットボトルをうっかり落としてしまった途端、窓辺で寝ていたニッキーが起き上がり、目やにのついた顔で突進してくる。彼にしてみれば、不覚! とでも言いたいところだろうか。大慌てでペットボトルを拾う姿は笑えた。そして、「ありがとう」の言葉を聞くなり、キッチンの床に寝てしまう情けない姿は、もっと笑えた。
 分離不安気味で、飼い主と離れるのが大嫌いなニッキーは、彼なりに安心したくて「ひと部屋の法則」を作ってしまったんだろう。何かが落ちれば自分が拾いたい気持ちも解る。
 でもね、ニッキー。たまには飼い主のことを考えずに寝ていてくれていいんだよ。いつでもそばにいてくれるのは嬉しいけど、ニッキーが幸せそうに無防備なポーズで寝ていてくれるのも嬉しいんだから。


■2003/03/12 (水) 老犬礼讃

 今日届いたニッキーのフードは、ついに「シニア用」。いつもの通販の人は、初めてシニア用を注文した私に、「大型犬なら5歳からお薦めしていますし、老いていかないためのフードですからね」と、慰め? の言葉をかけてくれた。
 私のひざに頭を乗せて寝ているニッキーの顎は、かなり白髪が目立つようになった。甘えるためにごろーんとおなかを出すと、白い顎につい目が行ってしまう。年取ったねぇ、でも、今のニッキーは昔のニッキーよりずっとかっこいいよ。そんな風に声をかける。
 我が家に来たばかりのニッキーは、表情が乏しかった。自信がなくおどおどしていた。ボールを追って走るときは嬉しそうな顔をしたけれど、今のように、飼い主と目が合ったときに微笑んだり、ちょっとしたきっかけで近づいてきて信頼の表情を見せたりすることはなかった。
 私の方も昔は、言うことを理解してくれたり、作業を覚えてくれたり、仕事をして助けてくれたりする時のニッキーが、いちばん可愛く思えた。でも最近は、何もしていない、ふたりで部屋にいたり、誰もいない道で散歩していたりする時のニッキーがいちばんいとおしい。
 誰にも見せない、飼い主とふたりの時だけの表情。年齢を重ねたせいか、私との絆が深まったせいか、とにかく「黒い暴走機関車」と言われたニッキーと5年以上頑張って、やっと見せてくれるようになったこの表情が、宝物に思える今日この頃だったりする。


■2003/03/08 (土) 再会その3

 これは再会っていうのかどうか…、とにかく7年ぶりに日本のバスに乗った。
 交差点のバス停から最寄の私鉄駅を通り、JRの駅まで行くそのバスは、杖をついて歩いていた時にはなくてはならない移動手段だった。その頃は、自力では最寄駅までの1キロちょっとが歩けなかったから、どこに行くにもまずバス。
 車椅子を使うようになって、駅までは自力で行けるようになったけれど、今度はバスに乗れなくなった。
 一度、バス停から乗客に声をかけて、「すみませーん、手伝ってください」と、車椅子のまま、付き添いなしでバスに乗った時は、降りる時に軽くトラブルがあった。私の車椅子を下ろしてくれようとした学生さんを、運転士が「乗り降りしないでください、バスの規則ですから」と引き止めたのだ。
 車椅子で付き添いなしの単独乗車は、万一車内で転んだり、周りの乗客から苦情が出た時に、バス側の責任を問われる。乗り込みに時間がかかって、時刻表どおりに運行できなくなる可能性もある。
 だからきっと、二度と単独乗車をして欲しくなくてそんな意地の悪いことを言ったんだろう。学生さんはいい人で、「事情が事情でしょ」と言って気にせず手伝ってくれたけれど。
 そんなトラブルがあってから、日本のバスに乗ることはなくなった。以来7年、いまや世の中は、バリアフリーとか人に優しいとか地球に優しいとか、そういう耳障りのいい言葉であふれかえって、超低床バスなるものも走っている。私のほうも、あれからアメリカ生活だの介助犬の訓練だのを経験して、ついでにおばさんのずうずうしさも加わり、強くなっていると思う。
 ニッキーと散歩に出た時、偶然超低床バスを見かけて、「ニッキー、乗ろうか」とバス停に並んでみた。ニッキーはツーソン時代、毎日のようにバスに乗っていたから、あの振動もドアが開く音も全然平気。
「すいませーん」と言うまでもなく、運転士さんが降りてきてスロープを出し、乗せてくれる。あまりの対応の差に、7年の歳月を感じた。「お手数をかけます」と言ったら、「いいんです、バスはみんなの乗り物ですから」と言ってくれた。
 昔は「みんなの迷惑になるから」なんて言われることもあったけれど、やっと私も「みんな」の中に入れてもらえるようになったらしい。スロープよりも、もっと大切なのは、そういう認識の仕方、なんだよね、きっと。


■2003/03/02 (日) 再会その2

 今度の再会は、帰国したばかりの頃にお会いした、ライターの方。生まれて初めて「取材」なるものを受け、妙に緊張したのを思い出す。まあ、主役は私でなくてニッキーだから、何も私が緊張する筋合いではないのだけれど。
 そのライターの方、それからとある写真家の方、とある訓練士の方、と非常に個性的で力強いメンバーに囲まれて過ごす時間は、とても楽しかった。
 いろんなことがあって、そういう人達と一緒に話したり、考えたりする機会も増えた。ほんの少しずつだけれど、沢山の人の意見や考え方を受け容れて、自分の視点も増やして、私も成長できただろうか。
 そう、誰かに再会する時は、私自身も、どれくらい成長できたかなって考えるきっかけになる。
 そして偶然、私達が話していたお店には、ネットで犬の話をしていた人が来ていて、またもや「久しぶり〜…あれ? はじめまして?」という会話になったりして、なんだか嬉しい一日だった。


(C)Yuki+Nicholas, http://blackdog.whitesnow.jp/