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くろいぬ日記

黒犬ニッキーと相棒の日々、時々猫も登場?

2003年10月の日記

■2003/10/25 (土) 同窓会と掘りごたつ

 今度は大学時代の仲間で同窓会があった。恩師の退職を機に集まったメンバーは、えーっというほど変わった人あり、見事に変わっていない人あり。
 いわゆる障害者スポーツに関わった仲間だったので、会場には車椅子も白い杖もあり、手話の会話もあり、友人の盲導犬とニッキーは、さりげなく挨拶していたりした。
 お決まりの二次会となって、約20名、6名が車椅子使用(+介助犬1頭)のメンバーで、お店を探すことになった。それだけのメンバーで行けるお店探しは、とっても難しい…と思っていたら、意外に簡単に、とある居酒屋に決定。
 先輩がこともなげに言う。「地下で階段があるけど、降りられない奴は俺達が運ぶからいいよな? 犬も、説明すれば大丈夫だろ」
 わが母校は、障害を持った学生も多かったので、本当にノートの貸し借りと同じ感覚で、階段での介助や、学生同士の手話通訳や点訳も、友達関係の中で自然に行われていた。それは伝統で、私が入学した頃には既に「キャンパスの空気」になっていた。
 その頃と変わらない。ごく自然に、何の負い目もなく、しかも安心して、階段で車椅子を運んでもらえる、そういう気分を久々に感じた。
 階段だって、坂道だって、放置自転車だって、バリアにはならない。もしも本当に、健常者と障害者の感覚や気持ちの上でのバリアが撤去されていさえすれば。
 本当に楽しい時間を過ごした。「障害者だけど輪に入れて貰っている」とかではなく、障害があって介助犬連れの私も、このメンバーの一員で、それ以上でもそれ以下でもない。
 そうそう、仲のよかった子が「実は犬苦手…」と引いたのは淋しかったけど、ちょっとアブナイ先輩が「犬には腕を噛み切られても許せちゃう♪」って言う位の犬好きだったり、学生時代はあまり話さなかった人とニッキーを介して今までとは違う話しが出来たのも、面白かった。
 で、ニッキーさん。
 上がる前に足を拭き(服を着せていたから身体は拭かなかった)、座敷に上がってみたら掘りごたつがあった。「アンダー」のコマンドでいつもどおり机の下に入ったニッキーは、なんと、帰る時になって掘りごたつから出られなくなった。
 友達がハーネスのハンドルをつかんで補助してくれ、なんとか脱出したものの、あの情けない顔。友人達には「感情豊かというか、面白いよ」と、褒められてるのかけなされてるのか、分からないコメントであった。


■2003/10/19 (日) 旧友と

 きのこ、というのは秋の味覚ではなくて、友人のあだ名。実に30年近い長い付き合いである。私達が小学校に上がるより前、療育施設で機能訓練を受けていた頃からだから、私の人生で初めての友達かもしれない。彼女とは、中学高校でも一緒になり、あんなこともこんなこともあったりした。
 そんなきのこと、数年ぶりに再会した。良くも悪くも、相変わらずのきのこだった。一方の私も相変わらずではあるけれど、この前きのこに会った時にはいなかったニッキーがいる。そう、きのことニッキーは初対面。
「おとなしいもんだねぇ、介助犬って…」ときのこは感心していたけれど、これには私もちょっと驚いた。ニッキーは私の態度を見て「介助犬の顔」と「お笑い犬の顔」を使い分ける犬だから、今日のように私が気楽に話していたら、もっと行儀が悪くなるかと、本当は心配していたんだから。
 きのこは私と同じ障害を持っているから、歩けるけれどふらふらゆっくりと歩く。視力もよくない。ニッキーはそんなきのこの様子を見て、結構気を遣っていたらしい。ぶつからないように気をつけたり、そっと場所をあけたりしていた。
 いつもなら、誰かが私の車椅子を押している時は気が緩むことが多いし、すぐ前に出るのに、きのこが歩行器代わりに私の車椅子につかまりながら押していても、ニッキーは見事に私達ふたりの邪魔にならないように、終始介助犬らしい態度で歩いていた。
 これは別に、介助犬だからとか訓練したからという訳ではないと思う。ニッキーが自然にそういう行動を取っていたのだ。
 犬も人も、多分本能で、相手を思いやることを知っているのかな。私の友達はニッキーにとっても「群れの仲間」だったり「守るべき」だったりするのかな。
 帰宅してから、長時間の外出と仕事と緊張とで疲れたニッキーを抱きしめて、特別ボーナスに骨ガムをあげた。お疲れ様、ニッキー。昔懐かしい友達との楽しい時間に、ニッキーがもっと嬉しい気持ちをくれた一日だった。


■2003/10/13 (月) 秋の空

 夕立の後で散歩に行く。ニッキーは水たまりを上手に避けてくれた。でも別に、私を思いやってくれるからではないらしい。ニッキーは、水たまりが何故か大嫌いなのだ。
 私が方向転換をする時や、道の端に寄った時、どうしても水たまりを踏まなければならないと、とっても嫌な顔をするし、許される状況なら器用に塀に張り付くような歩き方までして避けていく。
 そんなニッキーには気の毒なことに、今日は水たまりがいっぱい。ちょっと意地悪して、水たまりのある方、ある方に進んでみた。ニッキーはハーネスを着けているから、勝手に飛び跳ねたり、私から離れたりは出来なくて、なるべく水たまりに足が入らないように、でも一応相棒の左側の定位置をぎりぎりで守る、という気を遣った歩き方をしていた。
 面白がってニッキーの足元を見ていたら、夕立の後の空と、夕焼けのひつじ雲が水たまりに映っていた。
 ニッキー、久しぶりに空を見ながら散歩をしようか。でもニッキーは、やっぱり足元の水たまりが気になるようだった。


■2003/10/01 (水) 懐かしい顔

 深夜の散歩に行き、久しぶりに空き地でニッキーのリードを放した。ニッキーはリードを放しても、なかなか私から離れない子なので、ボールを投げて少し運動してもらうことにする。
 ボールを追いかけて飛び跳ねたり急に方向転換をしたりすると、「初老」のニッキーの足腰によくないので、ニッキーにステイをかけ、ボールを先に投げてから取りに行ってもらった。そうしないと、まだまだすごいジャンプをするのだ。本人は楽しそうに飛ぶけれど、関節や筋肉の負担が後になって出てきても困るから、心を鬼にしてステイをかける。
 それでもニッキーは、ボールが大好き。今日は、ここ数日ハーネスを着けて長時間真面目に働いた分、思い切り遊んでいた。久しぶりに、ツーソンの広い広いグラウンドで全力疾走していたニッキーを思い出すような、若返った仕草。そのうちひとりで勝手にジャンプしたりして。
 久々に、両耳がくるんとひっくり返った、興奮最高潮のニッキーの顔を見て、懐かしくて笑ってしまった。訓練中は、この子に「自分で興奮を抑えて冷静になる」ことを教えるのがいちばん大変だったんだよね。耳のひっくり返ったニッキーの顔を見ると、「また“アフリカ象”になって…」ってがっかりしたものだ。
 今はこの耳が、この表情が、懐かしくなってしまった。
 誰も聞いていないから、ニッキーだけにそっと話しかける。
「ねえ、『いくつになっても落ち着かなくて』って、人には言うけどさ、にっちゃんはいつまでもそのくらいのハイパーな犬でいてよね。ハーネス外した時だけは…」


(C)Yuki+Nicholas, http://blackdog.whitesnow.jp/