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くろいぬ日記

黒犬ニッキーと相棒の日々、時々猫も登場?

2003年11月の日記

■2003/11/21 (金) 写真撮影な一日

 時々、用もないのに出かけたくなる。思えばツーソンでの訓練中も「街頭訓練」と称して無駄に出かけていたっけ。
 杖を使って歩いていた頃は、とても「ふらっと出かける」「寄り道する」という余裕はなかった。独歩(補助具なしの歩行)の頃は、外出すら極力避けていた。車椅子を使うようになったことで、一見障害が重くなったのに、私の行動力と気持ちのゆとりはずっと大きくなっている。「障害が重い・軽い」ってなんだろうね。
 ともかく今日は、もちろんニッキーと一緒に、某大きなモールに行った。
 ニッキーの犬種名がブランド名になっている某カジュアルショップに、実物大のラブの置物が座っていた。置物と並んでニッキーにステイしてもらい、デジカメで並んだ写真を撮る。「かわいい〜」「見て見て、黒い方は本物だよ」なんて声が聞こえてくるから、ニッキーは得意そうに胸を張って、微動だにしない見事なシットステイ。カメラ付き携帯が普及して、「撮っていいですか?」とずいぶん沢山の方に声をかけられ、ぴろろ〜ん♪ とか、かしゃ♪ という音が聞こえる。
「犬がいる」ことに結構みんな好意的なので、びっくりしたけど嬉しかった。中にはニッキーが介助犬だと気づいていない人もいたけれど、それでも「こんなところに犬が入っていいの?」と言われなかったし。
 大きなクリスマスツリーがぴかぴかしていて、その前で写真を撮っている人も結構いた。私も、ツリーとニッキーを撮影。ツリーの下に階段があったので、「ゴー」「アップ」の指示で階段の途中まで上らせ、「ウェイト」「シットステイ」をかける。カメラ嫌いのニッキーさん、今日は何故か完璧なモデルぶり。
 大きなツリーとニッキーをひとつの画面に納めるのは至難の業で、いちばんうまく撮れた写真も、ツリーのてっぺんのお星様が写っていなかったけど、ニッキーとふたりきりで過ごした時間の写真が撮れた。
 このところ海外のトレーナーのセミナーとか、福祉関係のイベントとかで、偉い人や有名な人との記念写真も撮ったけれど、私にとっていちばん愛しいのは日常のニッキー。そして、日常のちょっとした場面で助け合えること。
 普通の一日の記念撮影、楽しかったね、ニッキー。
 きっと私の大切なニッキーの見事なポーズが、知らない人達のカメラにも記録されたんだろう。誰かがどこかで、現像した写真を前に「何この犬?」なんて驚いているかも。


■2003/11/16 (日) ニッキー走る!

 今日は日帰りで遠出した日だった。ニッキーと新幹線に乗ったのは3度目だ。でも、あわただしい旅行のことではなくて、その帰りの、ちょっとした出来事の話。
 新幹線の車内でトイレを我慢していた私は、降りるなり、手伝ってくれた駅員さんに「すみません、いちばん近い車椅子トイレに…」とお願いする羽目になった。駅員さんはいい人で「急ぎましょう!」と私の車椅子を押して全力疾走してくれた。普段駅員さんって、あんまり運動していないのかな? 思いっきり息があがっていたので、ちょっと心配になったりして。
 ニッキーは大喜び。一緒になって走る走る! リードがついている限り、トロットまでで、絶対ギャロップで走ることがない(昔からそう)子なので、全力疾走にはならなかったけど、しっぽが上がって、楽しそうだった。
 ところが、車椅子対応のトイレに使用中のランプが点いている。駅員さんは、何度かノックしたり呼びかけたりして、「中に人はいないのに…」と言った。押しボタン式のドアは、時々こういうことになってしまう。またも走って、鍵を取りに行ってくれる駅員さん。でも、鍵を持っている人が見当たらないとかで、ホームのトイレに行くことになった。
 限界の膀胱が体内の爆弾と化した状態で、エスカレーターに2度乗る。待ち時間が辛い。そしてエレベーターへ。その時、もう我慢の限界に達していた私は、ほんとはいけないけど、ニッキーのリードを放した。
「ドア、スイッチ!」この場合の「ドア」はエレベーターのことで、ニッキーは、先に走って行き、一発でエレベーターのボタンを押してくれた。予定より何十秒か早くエレベーターに乗り、トイレに到着することが出来た。
 仮にも公共の場で、一瞬だけれどニッキーがノーリードになってしまった訳で、とんでもないことかもしれない。でも、あの時ニッキーが先にボタンを押してくれなかったら…危なかったかも、膀胱。
 ニッキーは、久しぶりに「仕事をした満足」と「身体を動かした満足」を両方感じていたみたいだった。しっぽを高々とあげて、得意げなにっちゃん。家に着いてから、ボーナスにチーズのトッピングの乗ったごはんをあげた。

■2003/11/11 (火) 平均年齢

 先週の私の誕生日で、私達チームの平均年齢は21歳になった。ニッキーの誕生日は1月1日で、いつもお年玉と一緒になってしまうので、私の誕生日に「平均年齢が上がったんだから」という理由で、食べられるボーンをあげてお祝いした。
 そして、その夜。何も言わないのに、ニッキーは私のベッドの足元の自分の場所に飛び乗って、丸くなった。
 我が家に来てすぐに、「ベッドには乗っちゃ駄目」と教えられたニッキーは、7歳の誕生日(今年のお正月)に、ベッドの足元に乗ることを許可されてからも、私がベッドを指して「アップ」と声をかけない限り、自分から乗ろうとしたことはない。私がベッドに入るといつも、「乗りたいんだけどなぁ」という表情で、私が呼ぶのを待っていた。
 その日は誕生日だから(なのか?)、新しいカバーをベッドのニッキーの場所にかけて、「ここには乗っていいんだよ」と話しかけた。そして初めて、ニッキーは自分から、ベッドに上がったのだ。
 私はそれがちょっと嬉しい。寒さに弱い、関節も甘いニッキーに、少しでも快適に過ごして欲しいもの。
「グッドグッド! ベッド乗ってグッドだよ」
 褒められてニッキーは、ちょっと緊張していた表情をほっと緩めた。

 そして1週間後の今日。
 ニッキーはまた、部屋の隅っこの、本棚と窓と椅子にはさまれた空間に、小さく小さくまるまっている。ふかふか布団の上で気持ちよく寝てくれていいのに…平均年齢が上がっても、昔の習慣を律儀に守るニッキー…ちょっと淋しい飼い主だった。 


■2003/11/10 (月) 最近のことば

 かなり前だけれど、これから介助犬と暮らす女性と話した。いよいよ自宅での共同訓練が始まると言っていた。
「訓練大変だけど、**君(彼女の相棒犬)と一緒にいられるようになるんだもん」と彼女は嬉しそうだった。
 ニッキーは、暴走犬だった時代からずっと、私と一緒にいた。介助犬になろうとなるまいと、一緒にいようと決めて引き取った犬だもん。でもだからこそ、「一緒にいられる」ことがこんなに嬉しいってことを、つい忘れていたなぁ。

 それから先日病院で。小さな男の子がニッキーを指差して、「一緒! 一緒!」と言い、おばあちゃんの袖を引っ張っていた。多分その子の家で、同じ黒ラブを飼っているんだろうと、私は思った。
 でもおばあちゃんは、孫にこう言った。
「そうだよ、あの人はね、あのわんちゃんと一緒に、歩けるんだよ」
 なんて素敵な、嬉しい言葉だっただろう。
 車椅子の私を「歩けない人」と言う人は多い。介助犬ニッキーが「歩けないから必要」だと思われることも多い。
「歩けないから一緒にいる」のでなくて、「一緒にいれば歩ける」。
 おばあちゃんだって、車椅子に乗って介助犬を連れた私が物理的には「歩けない」と分かっているのに、私達の車輪と4本の足での移動を「歩く」と表現してくれたのが、何だか嬉しかった。いろんな歩き方や生き方があっていい。

 ついこの間、道端ではこんな言葉もあった。
「にっちゃんは、飼い主さんと一緒だとほんとにしあわせそうだよねぇ」
 きっとこの言葉の嬉しさに、解説はいらないよね。
 犬の表情をきちんと読める人に言われたから、なおのこと嬉しかった。私にとって、「ニッキーがしあわせ」なことは、飼い主として満足する以上に、自分自身や人生を肯定できるために、大切なこと。
 私と一緒に過ごす毎日を、そんなにも楽しんで、しっぽを振り回してくれて、ありがとう、ニッキー。


■2003/11/02 (日) 犬の夢

 ずっと昔、シートン動物記で読んだ話を、某掲示板で思い出した。アメリカ先住民の言い伝えで、犬が見ている夢を知る方法。
 眠っている犬の顔に布をかぶせて、しばらくしてから、それを自分の顔に乗せて寝ると、犬が見ていた夢が見られる…という。ニッキーさんはどんな夢を見ているのかな、と、ハンカチをかぶせようとした。
 ニッキーは、ハンカチを顔に載せられて目を覚ましたけど、ハンカチの下で目を開けたまま、別に抵抗もせず横になっている。あまりにも無抵抗なので拍子抜けする飼い主だった。
 結局、ハンカチをかぶせると目を開けてしまうから、実験は中止。でも、眠っているニッキーを見ていると、なんとなく見ている夢が分かるような気もする。後ろ足をゆっくり握ってみたり、顔の向きを変えたり、ふーん…とゆっくり息を吐き出してみたり。
 ニッキーの側に私も横になり、同じリズムで呼吸してみると、さすがにはっきりと夢の内容は分からないけど、ニッキーの気持ちが今、満たされているのか、疲れているのか、落ち着かないのか…そのくらいのことは伝わってくる感じがする。
 犬を擬人化することは、してはいけないと思う。でも、ニッキーの気持ちや、何をどう感じているのかを知ろうとする、想像力は持ち続けていないとね。
 今日のニッキーは満たされている、と感じる時は、きっと私自身が満たされている時。飼い主としても充分にニッキーに向かい合えた時。疲れている気がする時は私も疲れていたり、人に会いたくなかったりする時、かな。ニッキーを通して、時々自分を振り返ったりもする。
 おまじないなんかなくても、ニッキーと同じ夢が見られるような、そんな相棒でいたい。