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くろいぬ日記

黒犬ニッキーと相棒の日々、時々猫も登場?

2004年3月の日記

■2004/03/28 (日) 許可証、日の目を見る?

 土日で、ちょっと駆け足の大阪旅行に。大阪で盲導犬のパピーウォーカーをしているハーブママのところの、三女(3頭目のパピー)イリスちゃんが、日曜日に訓練所に戻るというので、卒業式? 入学式? を見学させていただくことになった。
 ニッキーにとっては3度目の大阪。私自身にとっても3度目の大阪。大阪に行くたびお世話になる、くまねこ家のみなさん、ありがとうございました。今回は初めて、大阪観光も出来た。巨大なカニとかフグとかグリコとかくいだおれ人形とかの前で、ニッキーをシットさせて写真を撮る、ばりばり観光客な私。ちなみに、ちょっとだけ期待したのに、ニッキーは道頓堀川には飛び込まなかった。
 そんな大阪旅行の後半、盲導犬協会訪問のことは後で書くとして。
 最初に大阪に来たのは、くまねこさんの紹介で、大阪の高校で小さな講演をさせて頂いた時。そのために私とニッキーは、JR東日本・東海・西日本の3社の試験を受けたんだっけ。もう3年以上が経ってしまった。
 などと思い出していると、駅員さんが「この犬はJRの乗車許可を受けている犬ですか?」
 ニッキーのハーネスの「介助犬」の表示は、いわゆる暫定表示で、今のところ指定機関の認定を受けていないので、法律は関係なく、乗車許可証が必要なのだ。*この点は、各協会や交通各社で、多少解釈が違う。
 でも実際には、JRの乗車許可を受けてからとっても頻繁に乗っているのに、許可証の提示を求められたのは、今回が初めて!
 一応念のためにニッキーのポーチに入れてあった許可証が、ついに日の目を見た。「ただの紙切れ」で終わらなくてよかったね、許可証さん。ニコラス号がJR西日本で登録されていることが確認され、無事帰りの新幹線に乗ることが出来た。
 ニッキーがいなければ、訪れるはずのなかった場所や人が沢山ある。
 ニッキーという犬がつないでくれた人の縁であり、介助犬ニッキーと暮らして初めて興味を持ったことであり、相棒ニッキーがいるからこそ、遠くに行きたいと思えるし、行こうとする元気が生まれる。
 同時に絶対に忘れてはいけないのが、ニッキーとふたりだけではない、ということ。良くも悪くも、沢山の人を巻き込んでしまうし、いろんな事情や都合に左右されることを、改めて感じたりした。


■2004/03/25 (木) ニッキーの貯金

 働く犬ニッキーさんは、わがままな飼い主の介助全般という仕事で、自分の食い扶持を稼いでいる。1日2食のドッグフードと散歩、健康管理などなどの報酬は、彼の働きから考えたら安いんだけれど。
 で、それ以外にも実は、ニッキーがお金を稼ぐことがある。我が家のルールで、一度落としてニッキーが拾ってくれたコインやお札は、ニッキー用の財布に移動し、ある程度貯まると、ニッキーの好きなガムやジャーキーを買うことに決まっているのだ。
 ツーソンで訓練していた頃、小さなダイムを、初めて(練習ではなく)拾ってくれた時、私はどうしてもその硬貨を使えずに、いつまでもポケットに大事にしまっていた。でも、使わないのではもったいないから、ニッキーの好きなものを買うことに決めて、現在に至る。私はコインをよく落とすので、ニッキーは結構お金持ち。
 そして今日はついに、ATMで全財産の入ったキャッシュカードを落としてしまった。ニッキーが拾ってくれたけれど…いつものルールからすれば、全財産をニッキーにあげなきゃ駄目?
 ニッキーさん、お願いですから、私の生活費ください! 第一、キャッシュカードの全額でジャーキーなんか買ったら、食べ過ぎちゃうよ!


■2004/03/23 (火) タイヤ交換

 車椅子のタイヤを交換した。普通以上に酷使する我が「足」、いつもいつもタイヤがぼろぼろになってから気づき、慌てて交換するはめになる。
 いつも出張で来てくれる自転車屋さんは、左の車輪を見て「いや、これならまだ交換しなくても」といい、右の車輪を見て「ああ、こっちはもう換えないと」と言う。地面に接している部分ではなく、車輪の横腹部分の傷み具合が左右で違うらしい。この差は何?
 多分、右利きの私は、方向転換も右の車輪ばかり動かしてしまうんだと思う。右に曲がるには右の車輪を逆回し、左に曲がるには右の車輪をそのまま押し、という具合に。それに、左側にはニッキーがいる。
 そうか、左手でニッキーのハーネスを握って助けてもらいながら、右手で右の車輪をコントロールしたり、押さえたり。特に右腕で横から車輪を押さえる時は、車輪の横がこすれるんだろうな。
 ニッキーが車椅子を引っ張ったり、方向を直したりしてくれることは、私にとっていちばんありがたい介助。もちろん長い距離やきつい傾斜ではさせていないし、そんなに頻繁にさせることでもない。でもきっと、私が思っている以上にニッキーの、ほんのちょっとの補助が積み重なって、移動できている。それもきっと、左右の車輪の違いの原因のひとつ。
 左右の車輪の傷みの違い。同じようにきっと、私の心がけ次第でニッキーの身体への負担も差が出るはず。それをしっかり心に刻もうと思った、タイヤ交換な日。
 すりへってぼろぼろになったタイヤは、ニッキーと歩いた沢山の場所の長い距離の記憶でもある。今日取り付けた新品ぴかぴかのタイヤは、どんな場所をどんな思いで歩くのかな。ニッキー、またよろしくね。
 ちなみに、この車椅子はニッキーの生まれた年に作ったもの。耐用年数は5年と言われているから、相当長く使っている。そろそろニッキーのために、もっと軽くて楽々と動き、小回りの利く車椅子に作り変えようと画策中の私だった。


■2004/03/22 (月) ボールがいちばん?

 雪とあられが混じったような今日の天気。寒さに弱い私は動けなくて、電気毛布にくるまってしまった。情けない。そんな私に付き合ってニッキーも、ドアの前のトイレスペースで排泄だけを済ませて、家の中で一日を過ごした。
 こういう時、ニッキーが暇をもてあましていたら、部屋の中で探し物遊びをするのがいつものパターン。ところが今日は、ニッキーはひとりで勝手に探し物をしてくれた。犬用品を入れてあるバスケットから、新品のテニスボールを探し出して、嬉々としてくわえ、見せびらかす。
 ニッキーにとって、食べられない物の中でいちばん「いい物」はボールらしい。だから自分が新しいボールをくわえていることを、とっても得意げに私に見せびらかして、自慢するのだ。「ギブ」とか「ドロップ」と言われたら、ボールを渡さなければならなくなるんだから、見せびらかすより隠しておいた方が得策だと思うんだけど…。ちなみにニッキーは、相手が猫でもボールを見せびらかし、思いっきり馬鹿にされる。
 せっかくなので、ボールを転がしたりして、少し遊んだ。年の功か、室内ではちゃんと気をつけて遊ぶようになったから、前のようにふすまに大穴をあけられる心配はない。しばらく遊んで満足したニッキーは、大事なボールを前足の間にしっかりキープして寝た。
 そして夕方。いつものように「電気つけて」と頼むと、ニッキーは立ち上がり、それからあわてて足元のボールを拾い上げた。大事なボールだもんね。でも、ボールをくわえているから、スイッチの紐をくわえられない。ボールをくわえたまま上を向いて、紐を見つめつつぐるぐる回るニッキー。その様子が面白かったので、私は何も言わないで見ていた。
 数秒後、一生懸命誘惑と戦った(らしい)ニッキーは、ボールを口から放して電気をつけてくれた。大好きなボールを放棄して仕事をしてくれたニッキーを、思い切り褒めた。それなのにニッキーは、「グーッド!」の声にも反応せず、大急ぎでボールを取りに戻った。
 ボールと仕事。ボールと飼い主。ねぇニッキー、本当はどっちが大事? 私とニッキーの間には、特別なかたい絆があると思っていたけれど、テニスボールごときで揺らいでしまっては…やばいかも。

■2004/03/21 (日) 帰宅―いろんな定位置

 ニッキーと4泊の旅行に行ってきた。といっても、ずっと行きたいと言っていた気楽なふたり旅ではなく、用事があってのことだけれど。
 ニッキーは結構旅慣れていて、電車もバスもタクシーも特急列車も飛行機も、ちゃんと自分の定位置を知っている。例えば電車なら、車椅子用のスペースかドアの前、相棒の車椅子と座席の間。バスなら固定された車椅子の斜め前(左横だと乗り降りする人に踏まれやすいから)。タクシーは相棒が開くドアの側に座り、ニッキーは反対側の足元。
 今回のように特急列車を使う時は、ニッキーは私の足元に小さくなる。飛行機の時とほぼ同じ位置。定位置に丸くなると、次の瞬間には爆睡態勢に入る大物ニッキーさんだった。
 とあるビジネスホテルに、介助犬同伴の宿泊を快く受け容れて頂いた。嬉しかったのは、拾ったうんこの捨て場所に困っていたら、玄関横に目立たないように「うんこ箱」を置いて利用させてくれたこと。本当に助かった。受け容れてもらった以上、こちらもマナーを守らなければ、という訳で、ニッキーは持参したタオルの上に待機。外泊する時の定位置だ。
 旅行中、私が用件を済ませたり、知人と食事をしたりしている間も、ニッキーはずっと一緒。いつもどおり車椅子の横の定位置で寝ているだけだけれど、それでも疲れると思う。今回の旅行の目的は、私だけでなく「介助犬ニコラス号」にも関わることだったので、ニッキーも緊張していたかな?
 昨夜帰宅すると、まずがぶがぶ水を飲み、もりもりごはんを食べ、カーペットの上でごろごろした後、家での自分の定位置、私のベッドの足元部分に直行した。自宅以外では絶対に乗らないくつろぎの場所に丸くなったニッキーは、旅行中の緊張が一気に解けたのか、半端な姿勢でいびきをかき始めた。
 私にとっては「日常から解放される」楽しみがある旅行。でもニッキーがいちばん好きなのは、我が家での自由な時間かもしれない。
 もっとも相変わらず調子のいいニッキーは、旅行中も知らない人に「わんちゃんだ」などと声をかけられては、嬉しそうに愛想を振りまいていたし、新しい場所に行く時はテンションもしっぽも上がっていたけれど。
 お疲れ様、ニッキー。いつもの場所でゆっくり休んでね。それに今度こそ、ふたりだけで遊びの旅行を満喫しようね。


■2004/03/13 (土) ハーネスを洗濯

 このところ、ちょこちょこ人前に出ることの多かったニッキー。一生懸命仕事をしてくれたお礼もかねて、今日はちょっと休日にした。もちろん、何かがあれば手伝ってもらうのだけれど、今日はいつものハーネスを着けさせないことにしたのだ。
 ニッキーのハーネスは、私の車椅子を引いたり、立ち上がりを補助したりする道具。これを着けないことは、介助犬として働かないことではなく、力仕事をお休みすることだ。
 ふと見るとハーネスは、土ぼこりを浴びたり、いろんな場所にこすれたり(ニッキーは狭い場所だと自分の身体を壁や塀にこすりながら歩くこともある)するから、かなり汚い。この機会に洗濯することにした。
 全自動洗濯機のおかげで、何の苦労もなくきれいになったニッキーのハーネス。リードはもう色があせているけれど、ハーネスは新品のようなきれいな赤になり、ちょっと嬉しい。
 思えば、介助犬として仮免許をもらってデビューした時からずっと使っている赤いハーネス。いつまで着けていられるのかな、と考えてまた、ニッキーがいとおしくなる。
 介助犬の仕事は幅があるから、犬の体力の変化に対して、例えば「車椅子を引くのはやめさせるけど、ゴミ袋を運ぶのは大丈夫」とか、「転んだら杖を持ってきてもらうけれど、立ち上がりの支えはさせない」とか、少しずつ仕事の内容を減らしたり変えたりしていくことになる。
 車椅子を引けなくなっても、立ち上がりを支えられなくなっても、ニッキーには出来る仕事が沢山ある。だからきっと、まだまだ出来ることがあるのに引退というのは、ニッキー自身にとってさびしいことだと思う。
 洗濯したばかりでまだ濡れているハーネスに、狂喜して頭を突っ込もうとするニッキー。そうだよね、仕事は楽しいんだよね。
 ニッキーにはハーネスを着ける喜びと誇りをずっと感じさせてあげたい。そしてもしもそれが、ニッキーにとって苦痛を伴う義務になる日が来たら、解放してあげよう。そんなことを考えてしまった。


(C)Yuki+Nicholas, http://blackdog.whitesnow.jp/