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くろいぬ日記

黒犬ニッキーとその相棒、ささやかにしあわせな日々。

2004年12月の日記

■2004/12/31 (金) また雪・今年もありがとう

 雪の大晦日。土のところには見事に積もっているので、無理をしても公園に行ってニッキーを遊ばせてやりたいと思ったけれど、万一途中で動けなくなったらと思うと自信がなくてやめてしまった。
 散歩中のニッキーに声をかけてくれる人には、出来るだけ名刺を渡して、「万一の時、近所の方に助けていただきたいので」と事情を話して、了解してもらえれば電話番号を教えてもらう。車椅子がパンクした時や、何かの理由で立ち往生した時、携帯電話で近所の人に救助要請。
「**でよくお会いする、**町の**です」と言ってもほぼ100パーセント「え?」と不審げに聞き返されるけれど、「介助犬のニッキーの飼い主です」と言えば、ずっと会っていなかった人でもすぐに思い出してくれる。「ああ、黒いわんちゃんの…」時には「ああ、あの元気なわんちゃんの…」または「ああ、あの愛想のいいわんちゃんの…」
 操作の下手な手動車椅子だけで、危なっかしく段差や坂や側溝がいっぱいの町を歩く私にとって、近所の人が私を覚えていてくれること、「何かあれば出来ることはしますよ」と言ってくれることがとても心強い。雪の日には立ち往生する可能性も高いけれど、どうしても出かけたければ、不特定多数の人が万一の時に助けてくれると信じて外出することも出来る。
 でも、今日は大晦日。さすがに、忙しく働いている時間や家族団らんを過ごしている時間に救助要請は遠慮する。飢え死にしない程度の買い物は昨日済ませたし、今日は家にいよう。
 実家に帰る予定が、雪で帰れなくなってしまったから、ニッキーとふたりアパートで新年を迎えることになった。ちょっと離れている家族と、私達の暮らしを地元で支えてくれるたくさんの「赤の他人」の人達、両方に感謝しながら、年が暮れていく。
 本当に、ありがとうございました。来年も、どうぞよろしく。


■2004/12/30 (木) 万年初心者と超初心者・PCとの戦い

 やっと年賀状を印刷しようとして…なんと、プリンタの部品が足りないことに気づいた。2002年は喪中、2003年は視力低下、2004年はまた喪中と、3年連続年賀状を出していなかったので、とても久しぶりの今回の年賀状。せっかく作ったのにもったいない。
 そこで、年賀状用のソフトで作ったデータを実家にメールで送り、同じソフトのある実家のパソコンで印刷、そのまま投函してもらうというすごい作戦を思いついた。でも…実家にいるのは、車系のメカは大好きなくせにパソコンには触ろうともしない父と、「ここを押して」と言ったらディスプレイを指で押そうとし、「そうじゃなくてマウスで」と言ったらマウスの頭とお尻を反対に持って動かし、カーソルを行方不明にした母だけ。
 私はまず、メールにこまごまと説明を書いた。「**と書いてある青い字のところに、マウスを動かして矢印を持って行き、指の形になったら、マウスの左のボタンを押す」というレベルで、実にこまごまと。そして、住所録のファイルとはがきのデザインのファイルを添付して実家に送信。それから、電話で母に指示をしながら、添付したファイルをソフトで読み込み、はがきに印刷する手順をひとつひとつ追った。
 それはもう悲惨だった。私は「万年初心者」だし母は「正真正銘・初心者前」。どれほど悲惨だったか、私たちの会話をそのまま書きたいところだが、母の名誉のためにそれはやめておこう。マウスのホイールのことを「ダンゴムシみたいなの」と言うレベルで、ふたりして頭がおかしくなりそうになりながら、無事年賀状は印刷できたのだった。
 一通り終わって特大のため息をつくと、ニッキーはいそいそとやって来て、私の手を鼻でつんつんしてねぎらってくれた。
 ニッキー…お母さんにパソコンを教えるより、君の訓練の方が100倍簡単だったよ。訓練は苦労すればするほど楽しかったし、ね。

【友人知人のみなさまへ業務連絡】そんな訳で今回の年賀状は手書きがありません。投げやりな感じがしてすごく嫌なんだけど…ご容赦下さい。しかも当然元旦には間に合いません。でもニッキーの写真はとってもかわいいです♪ 「うちにも送れ」という方、メールを下さい。


■2004/12/29 (水) 雪の日

 雪が降った。年老いたエアコンに無謀な連続運転を要求し、それでもちっとも暖かくならないので、自宅で凍死しないように部屋の中でも厚着をして過ごした。もし宝くじがあたったら、何よりも、しっかり冷暖房がきく部屋に引っ越そうと誓う。
 昔は雪が降るとわくわくしたのに、今は雪の残った歩道や凍った道が怖い。絶対外出しないと決めて、ニッキーには部屋の前の土の上でトイレだけ済ませてもらった。別に散歩を要求することもなく、少しでも暖かい場所に寝ることだけを考えている様子のニッキー。散歩より布団がいいなんて、やっぱり歳をとったんだなぁ。あと3日で9歳。
 私も冷える足を電気毛布で包んで、一緒にまったりする。本当は忙しく掃除をしたりしなければならないところだけれど、ひとり暮らしだから気合が入らない。
 するとニッキーは、今日の相棒は暇そうだと察したのか、突然甘え始めた。私のベッドの上でお腹をだしてしっぽを振り、前足をばたばたさせて招き犬になっている。もちろん私はニッキーの側に行き、耳や顔の横や背中…ニッキーが特に喜ぶポイントを順番に撫でた。しばらく自分のことに手一杯で、ゆっくりニッキーを甘えさせてやれなかったな、とちょっと反省した。
 でも。調子に乗って甘えたニッキーは私にもたれかかってきて、そのままバランスを崩してひとりで転ぶんだもの。しんみり反省していたはずが、笑ってしまった。なんでもないこんな笑いが、とてもしあわせに感じた雪の日。ひっくり返ったニッキーの、手術の時剃ったお腹に、新しい毛がびっしり生え揃っているのも、回復した証拠のようで嬉しかった。


■2004/12/24 (金) イブの夜

 何も特別なことをしなかったクリスマスイブ。昨日遠出をしたからニッキーをゆっくり休ませて…と言いつつ、自分が休んでいた。一応ニッキーは、ドッグフードに鶏のささみと温野菜を追加した、少しだけ豪華なクリスマスディナーを貰ったけれど、本当にそれ以外は何もしなかったなぁ。
 ミッションスクールで朝に夕に讃美歌を歌って育った私にとって、クリスマスは少し特別な日。ニッキーを撫でながらしばしこの一年を思う。何だか、自分の力が足りずに何も出来ずに過ぎた年だった気がする。
 対照的にニッキーは頑張ってくれた。一時は受験すら危ぶまれた認定試験に合格してくれたし、初めてカナダにも行った。初めての東北も、何度目かの関西も行った。ニッキーのおかげで新しい出会いもあった。懐かしい再会もあった。何より、あの本当に怖かった胃捻転から、生きて帰って来てくれた。よく頑張ったね。
 おばあちゃん、おじいちゃん、にゃーごや茶々丸と、ここ数年、人と動物を立て続けに見送って来た我が家だけれど、今年は誰も死ななかった! 神さまにいちばんに感謝するのは、まずそのこと。大切な人たちと大切な動物たちが、来年もずっと護られますように。
 そんなことを考えながらふと見ると、いつもどおり散らかった我が部屋の隅に、ひとつだけクリスマスらしいものを発見。
 10月の旅行から帰る途で見つけて、ニッキーに拾ってもらったまつぼっくりが、いつの間にかいっぱいに開き、小さなクリスマスツリーの形になっていた。かわいいから携帯電話のカメラで写真を撮った。
 メリークリスマス!


■2004/12/21 (火) 新しい車椅子

 予想より相当早く、先日注文した新しい車椅子が完成。早速最終的な調整のために自宅前の歩道で乗ってみる。乗り慣れるために同じ機種の車椅子を1週間借りていたけど、乗った感覚がまるで違う?? たった1箇所の調整を1センチ変えただけなのに。
 今までより楽に動かせるけど、転びやすい新車椅子。業者として納品に来てくれたケンちゃんパパは、「転ぶことはまずない」と言うけれど、身体のバランスが取れないから、それでもちょっと怖い。更に私は、車椅子を漕ぐのに腕を動かすと上体も足も一緒に突っ張るので、転ぶはずのない車椅子でもやっぱり…。
 あえて今までと違うタイプの車椅子に乗り換えることにしたんだから、覚悟の上ではあるけれど、慣れるまでは大変だろうなぁ。
 ニッキーを連れて新しい車椅子で、近所一周の初乗りをしてみた。違う車椅子に乗ってみて初めて、古い車椅子で覚えた感覚とのずれに戸惑った。今までに4台、借り物も入れたらもっとたくさんの車椅子に乗ってきたけれど、ここ数年で日本の車椅子はすごく変わった。今度の車椅子は、今までのものといろんな意味で違っていて、感覚がつかめない。
 それはニッキーも同じ。新車椅子のブレーキの音に反応しないし、今までの車椅子と動きが違うから、曲がるとぶつかりそうになったりする。でも、車椅子が変わったらリードや落とした物を手渡すのが以前より楽になった。後ろ足で立ち上がる必要もない。斜めになった歩道で久しぶりにハーネスを握って引っ張ってもらったら、力を入れなくてもあまりに楽々と動くのでニッキーも私もびっくり。
 分不相応なほどのアクティブな車椅子に乗り換えたいちばんの理由は、ニッキーが負担なく楽しんで仕事を続けられるように、ということ。その点は花丸つきの大成功! 無理せず、後悔のないように、楽しんでいこうね、ニッキー。


■2004/12/18 (土) プチ初めて

 散歩に行こうとして、いつもなら自然に閉まるドアが閉まらない。古い木造アパートだから、湿度や温度でいろんな調子が微妙に変わる我が家。車椅子からもう一度立ちあがって閉めるのもしんどくて、ニッキーに頼んだ。
「ニッキー、頼むよ」というと、何故か車椅子の下を覗きこむニッキー。鍵を落としたと思っているらしい。「そうじゃなくて、ゴー・アヘッド、タッチ・ザ・ドア」
 ニッキーは私の顔を見て確認しながら、大きく開いたままのドアの向こうに行き、前足で2度、ドアを押した。重いドアはゆっくり動いて、半分ぐらい閉まる。「イエス!」と励ますと、更にドアを追いかけて押すニッキー。最後になかなか閉まらないドアに、立ち上がって体重をかけ、思い切り押して閉めてくれた。「グッド! ありがとう」
 ずっと同じ部屋に住んでいながら、玄関ドアをこうして閉めたのは、ニッキーには初めてのこと。室内のトイレやお風呂場のドアや冷蔵庫で「ドアを押して閉める」ことは知っているので、言葉のかけ方で何をしたいのかを伝えれば、違う場所の違うドアでも応用できる。
 ニッキーは、まるで毎日やっているようにドアを閉めてくれた。でも初めてなんだよね。訓練中は初めてのことができるたびに、大喜びして手帳に書き込んでいたのに、最近はちょっと感動が薄れぎみ。
 散歩した帰りにいつものスーパーに寄って、買い物して帰った。そういえば、このスーパーに初めてニッキーと入ったのはいつだったろう? いろんな初めてがあったはずなのに、最近ではすっかり、ずっとずっと前からニッキーとこうしているように思えるのだった。


■2004/12/16 (木) かばん効果

 滅多に行かない病院の、今日は診察の日。いつも使っていたウェストポーチが壊れてしまったので、そのかわりに小さなバッグに財布やハンカチや薬を入れていた。例のすさまじい待ち時間に、膝からよく落ちるそのバッグをニッキーに運んでもらう練習をした。
「ゲット(くわえて)、ホールド(放さないで)、ブリング(運んで)」の言葉をかけ、ゴミ出しの時に袋を運ぶのと同じように運ばせる。取っ手の真ん中をくわえずに、バッグ本体の端っこをくわえようとするので、私がバッグの持ち方を変え、取っ手をくわえるように誘導する。基本動作の組み合わせだから、何の問題もなく成功。
 でも、母がバッグに手をかけると素直に渡してしまうニッキーさん。大事なものが入っているから、人に取られないようにしなくちゃね。母に「悪い人」役をやってもらい、「ホールド」と声をかけながら、バッグを渡さない練習。ニッキーは世の中全てがいい人だと思っているらしいから、やや頼りない。
 練習でほめられて得意げなニッキーは、そのまま私のバッグをくわえて、一緒に売店に行った。バッグをくわえているだけで、「かわいい!」と言われることがいつもより多くなっているのが可笑しかった。何だか一生懸命やっているように見えるんだろう。黒犬に映えるマスタード色のバッグのせいかな。
「ほら、ほら、犬が仕事してるよ! 邪魔しないようにしようね」と指をさす人もいた。必要に備えてただ一緒にいるだけで大切な仕事だけれど、それは他人には伝わらない。バッグひとつで理解してもらえるなら、まぁいいとしよう。
 売店でパンを買い、その時に私が落とした手帳と、その中に挟まっていたカード類をひとつひとつ拾ってもらった。つるつるの床から薄いカードを拾うのは結構大変だから、もちろんよくほめた。でも、バッグをくわえていた時ほど周りには注目されない。他人の目なんて、そんなもの。


■2004/12/14 (火) 待っていただけ

 半年に一度しか行かない方の病院で検査の日。この病院、この分野では有名で、一度は診察まで6時間以上待たされたこともある。1時の予約が7時半。恐るべし!
 のんびりしたツーソンでタクシーを2時間待っても平気だった私は、この悠久なる待ち時間も大して苦にならない(それはそれで問題?)。ニッキーが一緒だからいろんな人が声をかけてきたり、声をかけずに反応したり、待っている人同士が犬の話を始めたり…そんな人間観察も楽しめる。
 今日はエコーだけ(診察は後日)だったので、あまり待たずに名前を呼ばれた。私の反応を見てさっと立ち上がり、検査室へ向かおうとするニッキー。でも検査室は狭く、検査中に犬を見ていることもできないので、リードを母に預けてステイさせておいた。
 10分ほどして戻ると、ニッキーはダウンしたまま(グッド!)、全然違う人の車椅子を一生懸命見つめていた(おい!)。私が離れている時は、車椅子が通るたびに「!!!」と表情が変わるのだそうだ。でも、明らかに違うお年寄りや、どう見たって車椅子じゃない点滴のスタンドに反応しなくても…。近づくと、気づいた途端に慌てて立ち上がり、ステイを思い出して座ろうとし、それでもやっぱり嬉しくてばたばたし…と賑やかに迎えてくれた。さっき点滴のスタンドに反応したくせに…と思ってもやっぱり可愛い。
 今日は、何故か私がいない間にニッキーに目を留めた人が多かったらしい。母はいつにもまして機嫌よく、「ニッキーはいい子だね、いい子いい子」と繰り返す。「お利口に待っていたから、みんな『いい子ですね』『優しい顔をして…』って言ってたんだよね、ニッキー」と。いろんな人が大きなニッキーがじっと伏せているだけで感嘆していったらしい。
「当たり前なのに…」と言おうとして、その言葉を飲み込む。今日のように、結果的にはただ寝ていただけで介助の仕事の必要が何もなかった日でも、当たり前のように静かにそこにいられることは、すごいことなのだ。ニッキーは犬。人の言葉も常識も通じない犬が、ただ心のつながりだけで、私に合わせて行動してくれる。
 できて当たり前のことなんてない。それはとっても大切なこと。


■2004/12/12 (日) 2番目に好きな場所

 寒いのも暑いのも苦手なニッキー、冬はやっぱり私のベッドで寝るのがいちばん快適なようだ。ベッドの足元側に黒っぽいカバーを掛けてニッキーの場所になっている。
 若い頃はベッドに乗るのを禁止していたから、今でもニッキーはベッドに乗りたい時には私の許可を取りに来る。鼻先でつんつんして、よい子の顔でおすわりして、ベッドと相棒の顔を見比べて。「どうぞ」と言うと、無意味に勢いよく飛び乗るので、時々壁にぶつかるニッキーさん。
 そんなにもベッドが好きなのに、最近は私に気を遣って、私がベッドに入ると自分はさっさとベッドから降りてしまう。私は身体を曲げて寝るから、どのみちベッドには空いた場所ができるし、ニッキーが乗っていてもあまり邪魔ではないのだけれど、一度私の背中が痛かった夜以来、察したように遠慮してくれる。
 どうせなら仕事の時に気を遣って欲しいものだが、大好きなベッドをあっさり私に渡してくれるのも、ニッキーなりの優しさだし、私達の関係が良好な証拠かな。にっちゃん、ありがとう。
 ベッドを降りたニッキーは、大抵自分のハウスに丸くなって寝るけれど、今朝は私の座椅子に移動していた。最近は座椅子に座るより普通の椅子の方が楽なのであまり座らないけれど、体調によっては私がずっと座っていることもある座椅子。ニッキーは以前、今ベッドが大好きなのと同じように、この座椅子が大好きだった。ボスである私がずっと座っているから、部屋の中の「いちばんいい場所」だと思っていたようだ。何とかして寝ようと狙っていたっけ。久しぶりに思い出したのかな?
 ニッキー的にはベッドが1番、座椅子が2番なのかも。寒くないように、今夜は座椅子に何か敷いてあげよう。


■2004/12/09 (木) 今日はモデル

 犬の写真家ヒロ・サカイ氏がやってきて、AWDSAのチャリティグッズを作るための写真を撮影してくれた。サカイ氏、別名ダーリン、奥様のハンドルネームはサマンサ。それは愛犬の名前がタバサだから…って、若い人には分からないよね。。。
 ダーリン&サマンサ夫妻とは、某MLで知り合い、留学前からの長いお付き合いになる。協会初のチャリティグッズ製作に快く協力してくれてありがとう! 群馬から横浜まで、遠いところをお疲れさまでした。

 その撮影に向かう電車でのこと。途中の駅で電動車椅子の人が乗車してきた。車椅子で乗車するための白い簡易スロープが、駅のホームと電車の間に渡される。それを見たニッキーは私が降りると勘違いしてドアに向かおうとした。「違うって!」と引きとめられ、「ステイ」でもう一度車椅子の横に伏せるニッキーさん、何だか不満げ。
 もう何年も私と行動しているニッキーは、私の習慣や癖をよく知っているから、先を読んで行動する。最寄り駅に着くと起きることもそのひとつなのだけれど、どうやら駅がどこであろうと、簡易スロープを見たら降りるものと思っているらしい。先読みの得意な分、勝手に判断して失敗することもまた多いニッキーなのだった。
 電動車椅子の女性はふたつ先の駅で下車したので、またまた簡易スロープが登場した。ニッキーは今度こそと立ち上がり、「ステイ」と言われてしぶしぶ伏せる。ほんとにもう…。いつも最寄り駅やよく使う駅に着くとさっと立ち上がるから、もっとしっかり判断していると思っていたのになぁ。

 駅と福祉センターと協会で、他の犬たちと一緒に写真を撮影。ニッキーの振り返る顔や、白目の三日月を見せて見上げる顔、私の大好きな表情がプロのカメラに記録されていく。これもまた素敵な記念になるだろう。
 写真で見ると口の周りが白くなっているのがはっきりして、ちょっと時の流れを感じた。やることは相変わらず子犬みたいなのに、やっぱりもうすぐ9歳。


■2004/12/06 (月) 大人げない

 散歩に出かける準備の時。いつもはベッドに座って着替えるけれど、今日は背中が痛かったので、椅子で着替えることにした。場所が変わったので手が届かなくて、靴下と携帯電話をニッキーに持ってきてもらった。
 ニッキーさんは、出かける気配を察してしっぽを振り、やる気満々。最後に外出用のサングラスを持ってきてもらう。「ゲット、めがね」の指示でニッキーは、テーブルに向かった。サングラスはいつも、チェストの上に置いてある。「ニッキー、違うよ」と声をかけた。ニッキーはチェストの方に向き直って、サングラスを探している。私は今度は「イエス!」と励ました。
 なかなかサングラスを見つけられないようだ。少し迷って、またテーブルへ。「違うよ」と言っても今度は、散らかったテーブルの上の紙や本を鼻で押しのけはじめる。そして、テーブルにこだわって探していたニッキーはついに、埋もれていたサングラスを発見したのだった。あ、そういえば、テーブルに置きっぱなしにしてたんだっけ…私。
 いつもと違う場所で、いろんなものに埋もれていて、しかも私に「違う」と言われながら、しっかりサングラスを探し出したニッキー。もちろんうんと褒めた。
 それでなくても出かける嬉しさでいっぱいだったニッキーは、得意満面、とびきりの笑顔でやって来て、私の前でサングラスをくわえて歩き回り、見せびらかした。本当はすぐに私の手に渡さなければならないのに、よっぽど嬉しかったのかな。「ほーら、ちゃんとテーブルの上にあったでしょ!」と自慢しているようにも見える。
 ちゃんと判断して仕事をしたのは立派だけど、それに確かに私が間違えていたんだけど、そんなに自慢されるとつい、「でもあんた、しっぽでゴミ箱ひっくり返してますから、残念っ!」と、某芸人さんの真似で突っ込んでしまった私。「拙者、犬と同レベルに張り合ってますから…」
 たまにヒットを出すと自慢するニッキーも、それにいちいち突っ込む私も、いつまで経っても大人げないなぁ。ま、そんなところがちょうどいいコンビなのかも。


■2004/12/04 (土) 事情があるんだよ…

 水をよく飲むニッキー。今のところ健診では問題ないし、水をたくさん飲んでたくさん出してくれた方が、結石の心配もなくていい。でも先日の胃捻転以来、消化を考えて食前食後の1時間ずつは水を飲ませないようにしている。フードをお湯でふやかしているので水分は取っているけれど、胃液が薄まってしまわないように。ところがニッキーは、食前食後にこそ水が飲みたいらしい。
 食後に「水ちょうだい」と訴えてももらえないと分かると、ニッキーは寝てしまう。そして、食後1時間を経過して水を用意しても飲まないこともある。水を飲む量は変わらなくても、飲む形とタイミングが今までとは違うので、私もニッキーも何となく慣れていない感じ。
 最近、ニッキーはのどが渇いていても必ず食器に少しだけ水を残すようになった。飲みたい時に水がないことがあるから、空にならないように気をつけているのだ。ちょっと感心してしまった。相棒の私は未だにそういう計画的なことが出来ないのに。
 何だかニッキーにいろんな我慢をさせている気がする。胃捻転の再発の確率は低くても老犬なのは事実で、今までとは少しずつ、食べ物も食べ方も変わる。食べるのが何より好きなニッキーにとって、今まで大好きだったものがもらえなくなったり、量が減らされたりするのは辛いだろうな。自由に水を飲ませてあげなくてごめんね。
 気をつけて水を残しているニッキーを見て、無駄だと分かっていてもついつい説明してしまう私だった。
「ねぇ、ニッキー。あんたのために制限しているんだよ。年を取ったんだし、もともとお腹が丈夫じゃないでしょ。気をつけて消化のいいものを食べようね。長生きして欲しいんだよ、だから、ね…」
 言葉が通じるなら…分かってくれるなら…。100以上の言葉を理解している以心伝心の老犬を相手に、それでも、今までとは違う意味で思うこの頃。
 まぁ、お湯で柔らかくしたせいで見た目の量が増えたフードを見て「いっぱいもらえる♪」と喜ぶニッキーを見ていると、気持ちはやや軽くなるかな。


■2004/12/02 (木) 車椅子試乗

 車椅子の耐用年数は5年といわれている。重くてでかい旧式な車椅子に8年半も乗り続けていると、本人よりも周りが「何とかならないのか」とうるさい。
 私が今の車椅子を作った後で、長野パラリンピックや、某女優さんがO社製の車椅子に乗ってニッキーによく似た某氏と共演したドラマをきっかけに、日本でも軽くて小回りの利くおしゃれな車椅子が一気に普及した。そういう車椅子はもともと脊椎損傷・頚椎損傷の人が対象で、脳性まひの私には乗りこなせず、身体にも合わなかったけれど、ここ数年で、体幹や上肢に障害のある人にも使えるモデルも増えた。
 旧式な車椅子は頑丈である。まだまだ乗り続けられるけれど、耐用年数を過ぎているし、周りからこれ以上「何とかしろ」「でかい、重い、ごつい」と言われ続けるのもしゃくなので、この際おしゃれな車椅子を作ろうと思い立った。で、メーカーと機種と色まで決めて、いざオーダーという時になって、例のニッキーの緊急事態が。
 ニッキーの医療費が相当かかったから、一度は車椅子の新調を諦めたのだけれど、ニッキーの負担を減らすためにも、私が自力で動かしやすい車椅子を作ることにした。多少転びやすくなるのは覚悟で、軽く、小回りの利く車椅子を、最初の予定より安く(これ大事)。介助犬ケンちゃんのパパが車椅子の販売店をしているので相談に乗って貰った。

 と、ここまでが長い前置きで。
 今日は軽いアクティブタイプの車椅子に試乗してきた。いちばん安定する(転びにくい)設定にして、派手なピンクの車椅子に乗ってみる。思っていたほど軽くなかったけど、思っていたより坂道が楽に登れた。いい感じ、いい感じ。採寸をして、見積もり依頼。
 重い車椅子を一生懸命動かす姿は、決して颯爽としていない。レストランのテーブルにうまく納まらず姿勢を崩して食事する姿も、お店の通路でターンできずにもたもたしている姿も、「車椅子だとやっぱり大変」なんて言われてしまうから嫌だ。出来れば多少意地を張っても、颯爽としていたい。
 そして今日の試乗で、おしゃれな車椅子で颯爽と走ってみたのだが。近所の人たちは、「にっちゃん、痩せたんじゃない?」なんて、みんなニッキーの変化には敏感に反応してくれるけれど、誰ひとり車椅子が変わっていることには気づいてくれなかった。
 そんなものなのね。あーあ。

(C)Yuki+Nicholas, http://blackdog.whitesnow.jp/