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くろいぬ日記

黒犬ニッキーとその相棒、ささやかにしあわせな日々。

2005年1月の日記

■2005/01/29 (土) 同居記念日

 1月29日、ニッキーを我が家に迎えた記念日…は、誕生日とやや近いせいか、どうも忘れてしまいがち。毎年、少し過ぎてから思い出す。
 計算してみたら、私とニッキーは2557日を一緒に過ごしているらしい。たったそれだけ? と思うのは、ニッキーのいない自分を想像できないせいもあるし、もっともっとたくさんの時間を過ごしたいと強く思うから。
 思えば、ニッキーは最初の頃、とてもとても良い子だった。決して逆らうことなく、一度叱られれば決して同じミスをしない優等生だった。それが、しばらく経って突然、悪魔のような犬に変身してしまったっけ。気に入らないことを言えば無視し、散歩では私を引きずって勝手に行きたい方へ行き、隙を見て逃げ出し、呼んでも帰ってこなかった。
 もちろん、力も技術もない私がニッキーを掌握できなかったことと、慢性的な運動不足が原因なのだが、それだけではないと、今でも私は思っている。
 短い間に何度も飼い主が変わったニッキー。本質的には甘えん坊で、誰かにべったり頼っていたい彼は、ずっと不安だったはずだ。今までと全く違う生活で、全く違うことを要求されながら、新しい飼い主に嫌われ、捨てられるかもしれないという不安をどこかに持っていたのだろう。
 私に一生懸命気に入られようとしていたニッキーは、ある日「もう捨てられない」と確信し、わがままを一気に出した。どれほど叱っても効果はなかった。以来ニッキーに主人として信頼されるまで、本当に大変だった。
 でも、きっとあの頃、私より辛い思いをしていたのはニッキーだろうな。何度も何度も私を試すことでニッキーは、私にメッセージを発していた。「信頼できる人になって、ずっと守っていて欲しい」と。それなのに私はなかなかニッキーに応えてやれなかった。
 ニッキー、君との生活も後半になったから、もう一度聞いてみたい。君の期待に、私は応えられたんだろうか。今から君のためにもっともっと素敵な相棒になるには、どうしたらいいのかな。大好きな、世界一大切な犬ニッキー、あの頃よりずっと君の心が分かるようになった私に、もう一度教えて欲しい。


■2005/01/28 (金) 懐かしい感覚

 久しぶりのことがいくつかあった。まずは訳あって、机に座って解答用紙に向かうというのをやった。マークシートを塗りつぶすなんて、10年以上やっていない。久しぶりだからちょっと楽しかったけれど、30分もしないうちに肩がこった。
 帰りに買い物をし、その後駅に向かう時には、ニッキーも疲れているからと、久しぶりに動く歩道というのに乗った。じっとしていても進むから、ぼんやりいろいろ考えたり、映画の看板を見たりしていたら、降り口でタイミングが合わず、車椅子の前輪が勢いでがったーんと上がって、一瞬ひっくり返るかと思った。
 JRから私鉄に乗り換えて、実家に向かったが、駅員さんがみんな「O駅で降りるんですよね」と言う。その度に「いいえ、D駅です」と答えたけれど、やや不安。そして予想通り、下車駅のホームには駅員さんの姿はなかった。ぎりぎりまで待ったけれど誰も来る気配がないので、思い切ってドアのところの縦型の手すりにつかまって、後輪からそっと電車を降りた。ニッキーは落ち着いて、私の動きを邪魔することなく上手に降りてくれた。
 ああ、これも久しぶり。何年ぶりだろう? 今はどの駅でも、どの線でも、駅員さんが簡易スロープを出してくれて当たり前なような気がしていたけれど、初めて車椅子で外出した頃は、駅員さんがいないことが時々あって、不器用ながら自力で降車できるように一生懸命練習したものだった。
 転んだりしたら大変だけれど、とりあえずうまくいったから、楽しかった! って言ってしまおう。何もかもうまくいくよりは、こういう日が好き。


■2005/01/25 (火) 大好物

 猫達におみやげで買ってきたのは、彼らが大好きなねずみのおもちゃで、しっぽが羽根になっているもの。特に目新しいものではないけれど、「ねずちゃん」が大好きな若者チームのリズ・ギギ・ちーには大変好評で…あっという間にばらばらにされてしまった。気に入ってくれたのは嬉しいけど、せっかくのおみやげをもう少し大事に楽しんでくれないもんだろうか。もうひとつの「ねずちゃん」はしばらく隠しておこう。
 ニッキーには、特大のグリニーズを1パック買ってきた。何だか身体によさそうな成分も入った緑色の犬用ガムで、ニッキーの大好物である。
 こちらは大事に味わって欲しいので、あげる前にレンジで少し温めて柔らかくし、包丁で切り分けた。柔らかくなっても私の力では切れない固さなので、母に切ってもらう。特大サイズを3等分してよく見比べ、いちばん小さそうなのからあげた。
 カーペットにぺったり寝そべって、顔を傾けながら夢中でガムをかじるニッキー。鼻歌が聴こえそうな光景。
 先日、テニスボールの山を見て大喜びしていたから、今でもボールは大好きなのだろうけれど、やっぱり年齢と共に、おもちゃに対する興味は失われぎみ。対照的に食欲は衰えず、さらに味にもちょっとだけうるさくなった。
 若い頃はフード以外のものを極力与えないようにしていたけれど、これからニッキーの意欲を上手に維持するために、おいしいものが活躍するかもしれない。それに、ニッキーがもっと年をとったら、きっと最後の楽しみは「食」なんだろうな。
 ドッグフードにトッピングして、最近は温野菜やささみも与えている。消化と栄養を考えてのことだけれど、さらにおいしくて満足できるものを考えてあげないと。そんなことをふと思ったりもした。
 それにしてもニッキー…誰も取り上げたりしないから、そんなに一生懸命ガードしないで、気楽に食べなよ。


■2005/01/20 (木) ビデオ鑑賞

 第二の故郷アリゾナに帰る時だけは、時差ぼけなしの私。機内で寝るタイミングなんかを身体が覚えているのかな、多分。
 でも、日本に戻ると時差ぼけがひどい。何故…? とにかく、時差ぼけと頭痛(疲れて眼圧が上がっていたらしい)でだらだら寝ている私のそばで、ニッキーもだらだら寝続けていた。疲れたよね、ゆっくりお休み。

 で、目覚めてだらだらと、お土産の整理を始めた。お土産といっても、猫達に派手なおもちゃと、ニッキーに特大のグリニーズ、あとはちょこちょことした、犬用品や小物。本当は両親に、あんなもの・こんなものを買ってきたかったんだけど、結局買わずじまい。
 それからトップドッグのビデオ。私達が参加していた頃は、テキストブックを使っていたけれど、昨年、トップドッグの生徒と卒業生(つまり全員障害者)が実演して、トレーニングのやり方を解説したビデオが出来たので、今回買ってきた。早速鑑賞。
 もちろん、本やビデオだけで犬の訓練が出来るはずはないけれど、実際に障害を持つ人が、犬と一緒に訓練を楽しんでいる様子と、ちょっとした工夫を見られるだけで、参考になる人は多いだろうな、と思う。
 同級生だったダイアンとハーポやジムとサシーをはじめ、懐かしい人達と犬達が映っていたのが楽しかった。大先輩が新しい犬と訓練していたり、もう引退した犬が久々にハーネスを着けて出演していたり…。思わず画面に向かって手を振ってしまった。
 ニッキーも珍しくビデオの音声を聴いてうろうろ。ふたりして楽しいビデオ鑑賞となった。そして…
 知らない人には分からないことだけど…いちばん笑ったのは、最後に収録されていた、ナレーションを務めたマイク(初級クラスで私達の先生だった大先輩で、本業はラジオのナレーター)のNG集だった。ほんのちょこっとなのにつぼに入ったよ。


■2005/01/18 (火) アリゾナラストツアー・さよならツーソン

 のんびり過ごしたけれど、ニッキーと充分遊び、その後メキシコ料理も堪能したし、ちょこっとおしゃれな犬用品も入手、懐かしいバスでうろうろしたり、懐かしい場所で買い物もした。ニッキーとここを訪れるのは最後だろうけど、満足して帰れそうだ。
 帰国の朝、ツーソンの空港でいつもより厳しいセキュリティを通ったら、何故か私の車椅子のポケットにあるテニスボールがチェックされ、わざわざエックス線を通されていたのには笑った。それなのにニッキーの背中のポーチは点検なし。いいのか???
 LAで成田行きに乗り継ぐには、以前はツーソンをまだ暗い時間に経つ便しかなかったけれど、今回は9時台の便が出ていた。だから最後に、飛行機からツーソンの雲のない空と広い砂漠を見ることも出来た。
 さよなら、私達のツーソン。

 LAで例の犬用トイレに立ち寄り、乗り換えた機内で映画を楽しみ、今回は珍しく私はほとんど寝ないで(ニッキーは寝ていたけど)成田に到着。日本は19日。飛行機で移動すると確実に介助の手(空港の人とか、客室係の人とか)があるのがありがたいけれど、ああ、最後のツーソンに浸っていたい時にも、どんどん車椅子を押されてしまって、どんどん現実に押し戻されてしまう。
 動物検疫は、今回事前の血液検査が間に合わず、旧条件での自宅検疫となった。でも、検疫所でのチェックは、以前より楽になったと感じる。「まだ海外旅行できそうですよ」と検疫所の人に言われ、ちょっと嬉しい。ニッキー、君に無理はさせないけど、もう一度海外に行くのを目標に健康管理を頑張ろうか?

 かくして、ニッキーと私の「多分最後」のアリゾナ旅行は無事終わった。8度目の海外旅行から無事に、元気に帰国できたことが何より嬉しい。国内旅行も入れたら、多分19回目の、いろいろな意味で感慨深い旅になった。
 ニッキー。旅行中も元気に過ごしてくれて、私と一緒に楽しんでくれて、ありがとう。これからも元気でいてくれれば、それ以上に望むことは何もないよ。

■2005/01/17 (月) アリゾナラストツアー・ニッキー走る!

 バスで出かけようとして危機一髪。大通りを横断中にニッキーの新しいリードが車椅子の後輪に引っかかり、ループが転倒防止バーにすっぽりはまった。ここの信号はあっという間に変わるので、絡んだままのリードを首輪から外し、ハーネスを握った。私がハーネスを握ったので、ニッキーは車椅子を引っ張って前進。ごめんね、力仕事はもうさせないつもりだったのに。
 でも、それも懐かしい。留学中、ゆっくりしか車椅子を動かせない私はいつも、信号が変わる前に通りを渡りきることが出来ず、ニッキーに手伝ってもらっていたのだった。今でもその仕事をこなしてくれたニッキーが誇らしい。ありがとう。
 車椅子でバスに乗ると、通路を確保するために乗客が一斉に座席に足をあげ、体育座りになるのも懐かしい。このバスに乗るのも4年ぶり。
 思い出のグラウンドに着くと、ニッキーはしばらくその辺の匂いをかいで、がしがしっ! と爪痕を残した。テニスボールを投げて、いつもどおり遊ぶ。この時期ツーソンはいちばん過ごしやすいけれど、日本との気温差で暑く感じられる。早めに遊びを切り上げ、ニッキーには「涼しくなってから、もう一度来るから、ね」と言い聞かせた。一旦ホテルに戻る。

 午後は検疫書類のために近くの動物病院へ。そのまま近くのモールで、アリゾナ大学に留学中のまきさんとゆい君のおふたりとお会いした。これまたネットの縁。ふたりとも犬が大好きで、ニッキーは調子よく甘えまくる。
 お茶を飲みながら、ふたりともそれぞれ犬の写真を見せて、親ばか自慢。犬仲間の集いになっていたかも。個人的にいちばん驚いたのは、日本でも一般人は知らない松永製作所(車椅子メーカー)を、何故かゆい君が知っていたこと…犬談義はともかく、車椅子談義が出来るとは思わなかった。
 ふたりに付き合ってもらって、夕方もう一度グラウンドへ。さっきよりずっと元気にボールを追いかけるニッキー。「元気だねぇ、キャッチが上手!」なんて褒められてはしゃいでいた。
 ニッキーの足腰に負担のないように気にしながら、結構遊ばせた。もう後悔はないよね、さあ帰ろう。無理にリードを着けることはしなかったから、ニッキーは何度か「もう少し…」と戻ったりし、いよいよ帰る時にもじっとグラウンドを見つめていた。
 ニッキー、ここで過ごした思い出、一緒に大事にしようね。君が元気に駆け回る姿、本当に嬉しかった。


■2005/01/16 (日) アリゾナラストツアー・のんびり

 日本で安い航空券を買った時、フィニックスからツーソンを飛行機で移動してもしなくても値段は同じ、と不思議な事実を聞いて、飛行機で移動することにしたけれど、こんなに知り合いに会うなら、誰かの車に乗せてもらえばよかった。
 フィニックスの空港ゲートにたどり着くとどっと疲れを感じた。短いフライトでニッキー共々爆睡した。少し改装してきれいになったツーソン国際空港からは、いつものシャトルバスでホテルへ。かつての我が家にほど近く、かつてよく買い物をしたスーパーとペットショップに挟まれた、懐かしいホテルではあるが、車椅子用のリフトが動かなくて寒い中(砂漠の夜は寒い!)待たされ、部屋は以前のキッチンがいい加減なテーブルに変わり、壁の塗料の匂いが気になる。疲れているから余計にがっかり感が。
 とにかくニッキーの排泄とご飯を済ませると、11時。私は何もせずベッドに入って、目覚ましもかけずに寝た。

 そして日曜。ニッキーのトイレと朝ごはんだけはどうにか済ませ、お昼まで寝たり起きたり怠惰に過ごしてしまった。ニッキーもきっと疲れているはずだから、1日2食のところを3食に分けて胃腸を休ませ、ゆっくり寝かせてやる。
 お昼過ぎ、ふたりで出かけた。行きたい思い出の場所や、食べたいものなんかもあったけれど、今日は休養第一にしよう。とりあえず、両隣のスーパーとペットショップでゆっくり買い物。ずっと頭が痛かったのに、外に出てツーソンの青くて広い空を見上げたら、あっという間に気分がよくなる単純な私。汗ばむほど暖かく、留学中の記憶と結びつくツーソンの匂いのようなものがあった。「ニッキー、帰ってきたね。ツーソンだよ」
 介助犬になる認定試験を受けた思い出のスーパーで、水と食べ物を買い、それからペットショップで、友人に教えてもらったダブルループ・4フィートのリーシュを買い、胃腸の弱い犬用のサプリメントというのも、半信半疑で買った。
 買い物を終えてふと見ると、昔住んでいたグラントの方へ向かうバスが通った。この町に観光客として来ていることをちょっと淋しく感じたけれど、懐かしい空気の中でゆっくりして、ニッキーと一緒にのんびり。


■2005/01/15 (土) アリゾナラストツアー・ツーソンへ

 カンファレンス最終日には、ナンシーがトップドッグの授業風景を披露した。別の団体の人たちの、オーナートレインド(使用者になる障害者が直接訓練を行う)ドッグに関する発表ともちょこっと連動している。模擬授業の生徒役として参加させてもらった。
 私達は犬のトレーニングの指導を受けるだけではなく、犬の健康管理や犬の福祉に必要な知識や、自分の身体を管理し、介助犬を適切に使うための知識も学ぶ。今回は、犬の普段の動きを把握しておきましょう、その犬に無理なことをさせたり、不調のサインを見逃したりしないように、という、上級クラスに進んで最初に受ける授業を再現。
 私が受けた授業とは少し内容が変わっていたけれど、何だか懐かしい気分。でも、「歳をとってから引退を決める時…」「仕事の内容を検討する時…」なんて話が、以前よりずっと深刻に感じられる。
 あれ? そういえば今日は土曜日。ツーソンでは本物の授業が行われているはずなのに、なぜみんなここにいるの?
「スタッフも、興味を持った生徒もみんなこっちに来ているから、今日の授業はお休みになったの」って、ああ、さすがおおらかなトップドッグ。このおおらかさがあるから私も最後まで続けられたんだけどね。

 トップドッグやハッピーテイルズの人たちだけでなく、この間のイベントで知り合いになった人たちもいて、日本から大量に持ってきたお土産の絵葉書や千代紙は、あっという間になくなった。
 昔自分が受けたトレーニング、ニッキーと暮らした乾いた土地、そして、久しぶりに会う仲間達。私は原点に帰る気持ちと、流れた時間を確認する気持ちを複雑に抱えて、夕方ツーソンへ移動した。
 最後の晩のバンケットに参加できなかったのが少し心残りだけれど、ホテルで手配してくれた空港への送迎車がなんと黒塗り・革張りシートのリンカーンだったのにはびっくり。庶民な私はとても落ち着かなかったが、ニッキーは革張りシートの足元に悠然と横たわった。
 明日帰国する痔先生やケンちゃんファミリーと別れ、ここからはたった3泊ながら、ニッキーとのふたり旅となる。


■2005/01/14 (金) アリゾナラストツアー・ヒューメインソサエティ見学

 カンファレンスで、自分の興味のある話題はしっかりチェックしているけれど、その内容は一般向けではないので置いておいて(本当はレポートしたいこともたくさんあるけど)。近くのヒューメインソサエティを見学するツアーに参加させてもらった。飼い主のいない犬猫の保護・譲渡を目的とした施設である。
 動物舎に入ることになるので、補助犬はお留守番。ニッキーは痔先生たちと一緒に、帰りの検疫に必要な健康証明書を貰うために獣医さんへ行った。信頼する先生にお願いしているとはいえ、外国でニッキーと別行動は不安で不安でたまらなかった。でも実は、留学中もアニマルシェルターを訪ねたことのない私にとって、初めてのヒューメインソサエティ見学はとても興味があった。
 最初の印象は、何よりその土地と建物の大きさ、広さ、きれいさ。そして、動物舎(犬がもっとも多く、猫もかなりいて、さらにフェレットなどの小動物室も)が清潔であることだった。当たり前とはいえ、動物達が快適に過ごせるように、個別に充分なスペースがあり、跳ね上げドアから戸外のスペースに出ることも出来、清潔に管理されている。
 動物を迷子にしたり、病気にしたりしないために、予防接種やマイクロチップ、しつけ等々について、人間が勉強できる場所も立派。クリニックも用品売り場もあって、引き取られていった動物達の飼い主が、継続してセンターを訪れ、動物達の生涯にわたってきちんと飼養できるように、という意図が感じられた。
 同行したジョイスに聞いてみると、「介助犬候補をここから選ぼうと思っているけれど、まだ基準を満たす子がいたことがない」とのこと。介助犬の適性は重要だからとてもとても狭き門だけれど、誰かを支える介助犬が育ってくれるといいな、と思う。
 飼い主を待つ犬や猫をたくさん見て、どれほどそこが快適な空間であっても、やっぱり胸が痛んだ。そして、無性にニッキーとわがまま猫軍団が恋しかった。グッズ売り場で愛しのニッキーと猫達にお土産を買って帰途へ。
 分離不安気味のニッキー、予想通りの大騒ぎで再会。ヒューメインソサエティの子たちを救ってやれない無力さを感じたけれど、せめてニッキーと我が猫達だけは、しっかりと愛し、守っていけますように。


■2005/01/13 (木) アリゾナラストツアー・ちょっとお遊び?

 ADIの3日間のカンファレンス初日。この日は、IAADPの一会員でしかない私には入れないミーティングなんかが多くて、私とケンちゃんパパとケンちゃんママこといつものヘルパーさんは、ロビーや会場周辺をうろうろして過ごす。
 ケンちゃんは初めて見るサボテンの匂いをかいで痛い目に遭っていた。ニッキーは「ご自由にどうぞ」と袋いっぱい置かれているテニスボールの中から、いちばんいいボールを選ぼうと一生懸命。どちらも笑いをとっていた。よっ、世界に誇る日本のお笑い犬コンビ。
 ドッグショウ会場で売られているようなちょっとよそ行きの首輪とリードを売る人達や、革のハーネスを作る職人さんなんかがブースを出していて、ケンちゃんパパは手動車椅子を引く時に使うハーネスを注文し、私もニッキーに、革の首輪に「BELOVED SERVICE DOG NICKY」と刻印したものを注文した。
 ロビーには昨日同様、旧友がたくさんいて、私は近況報告やら思い出話やらであっという間に時間が過ぎていった。ハッピーテイルズのジョイスやリリーにも再会。
 リリーの介助犬ウェスリーは、堂々とした体格と優しい性格の素敵なゴールデンで、大好きだったのだけれど、この子も亡くなって、以前会った時は訓練犬だったモリーが後を継いでいた。時の流れは早く、人間より早く老いてしまう犬達に流れる時間はもっと早い。
 ここ数年毎回見かけている、ニッキーがそのまま巨大化したような大きなフラッティのフォーリ君も、今回初めて一緒に写真を撮って聞いてみたら、同じく9歳。顔のよく似たニッキーとフォーリ君、同じように白髪が出ていた。

 どちらかというと「犬仲間の集い」のように遊んで過ごしてしまったこの日。でも、リードのちょっとした工夫や、車椅子を安全に動かすコツなど、やっぱり経験者同士の情報は貴重だ。ついこの間悩んでいた、リードを車椅子に固定できない問題も、さっぱり解決。
 介助犬と暮らす人同士のメーリングリスト(イギリスの人が主宰しているので、英語)で、文字だけの交流をしていた人と偶然会ったり、このサイトを見てくれていた人に声をかけられたりもして、ネットを通しても沢山の友達がいるなぁと、またまた嬉しかった。


■2005/01/12 (水) アリゾナラストツアー・旧友に再会

 フィニックス到着後も、車椅子対応バンのリフトが壊れていたり、会場から3マイル離れていると聞いた宿がもっととんでもない距離離れていたり、部屋と人数が間違っていたり、とちょこちょことあったものの、1泊して、初日のIAADPカンファレンスに無事到着。

 会場に到着するなり、トップドッグのディレクター、リディアがオーバーアクションで迎えてくれた。ブレイクとメアリ・ジョージとマイク、トップドッグ初期からのそうそうたる先輩達もいた。ツーソンから車で2時間ほどのフィニックスでの開催とあって、沢山のメンバーが参加している。おなじみのナンシー、講師ののパムに、ボランティアの人たちまで。本当に嬉しい再会になった。
 ブレイクの介助犬サヴァナは数年前に亡くなり、今はブリジットが寄り添う。メアリのセドナとマイクのルビーも引退し、その後亡くなって、ふたりとも新しい犬の訓練中だ。
 9歳のニッキーを見て、みんなが言う。「あの頃のニッキーはジャンプしてばかりだったけど、いい子になったね」「元気そうでよかった。長生きしてくれるといいね」「もし次の介助犬を訓練する気になったら、また一緒にやろう」ああ、今もここに、私とニッキーの大切な仲間がいる。それがとても嬉しかった。でも「9歳になってもニッキーはニッキーだね」って…褒め言葉か??
 サヴァナもセドナもルビーも、亡くなった今もそれぞれのパートナーの中に生きている。思い出としてだけではなく、介助犬と共に沢山のことを可能にした自信や、訓練を通して得た体験や、長い時間の絆や愛情が与えてくれる心の強さが感じられる。いずれニッキーが引退しても、私もそんな風に強くいられるといいな。
 本日の私にとってのメインイベントは、やっぱりカンファレンスでの発表。エドやデヴォンやアレンに混じって、日本のことや、エドたちの訪日のことについて少し話しただけだけれど、まぁ無事に終わり、その後会場で日本に興味のある人達にいろいろ声をかけられたりもして、なかなか楽しかった。
 私が壇上で緊張している間に、日本から同行したメンバーは外に食事に行ってしまったので、写真がないのがちょっと心残りだけど。
 ニッキーの体調もよく、それなりに疲れてはいてもみんなに愛想を振りまいていて、元気よく昔の先生達にお手なんかしていた。そんな姿を見ていて、やっぱり来てよかったと思った。


■2005/01/11 (火) アリゾナラストツアー・出発

 父の車で、成田空港に出発3時間前に到着。余裕たっぷりの時間だと思っていたら、何かとうまく行かない。
 空港で旅行保険に入るのにまずは引っかかる。素直に「障害あり」なんて書くと大変だそうで、車椅子に乗って介助犬を連れ、明らかに目の悪そうな黒眼鏡をかけた私に、カウンターの女性は「障害なし」と記入させた。それはそれで面白かったけど。
 旅行会社から航空会社への連絡がどこかで切れてしまったらしく、手動車椅子1、電動車椅子1、介助犬2、徒歩2で搭乗手続きをしようとしたら、ここでもまた結構大変だった。さらに飛行機に乗り込んだら、犬達にもひとつずつ座席を確保する(もちろん犬はシートには乗らない)というU航空の規則のおかげで、ケンちゃんとニッキーに座席を確保するべく、人間パズルを繰り広げてくれた。
 ロスアンジェルスでアメリカに入国し、飛行機を乗り継ぐ。飛行機を降りてすぐに外へ出て、犬達の排泄。よく我慢できました、花丸。
 入国審査では、テロを警戒してかいつもより厳しく書類をチェックされ、書き直させられたり、指紋と写真を採られたり。犬達も、いつもならフリーパスのところを確認の質問をされた。
 障害者差別を禁じたADA法の規定で「あなたは障害者ですか?」「どこがどう不自由ですか?」という質問は禁止されている。補助犬の認定証などを要求することもしてはいけない。そのためこういう時には、「この犬はあなたにどういうことをするのですか?」と質問される。
「この犬は、コインを落とした時に拾ったり、ドアを開けたり、車椅子を動かすのを手伝ったりしてくれます。私は左目が見えないので、左側にある障害物を避けるのも仕事です」と、丁寧に答えながら、この質問を受けたのは初めてなのでちょっと楽しかった。
 ケンちゃんパパは褥創予防の厚いクッションを使っているので、「身体を持ち上げて、そのクッションを確認させて欲しい」ってなことを言われ、それは出来ないと言っても何度も聞かれたとか。
 今までになく、すんなり行かない旅の始まりとなった。


■2005/01/10 (月) アリゾナラストツアー・序章

 毎年恒例のIAADPとADIのカンファレンス、今年はぎりぎりまで行かないつもりでいた。年齢なりの老化は感じるものの、ニッキーの体調はとてもよく、気力も充実している。でも、去年の急病を考えると、やっぱり海外旅行は怖かった。
 ところが何と、エド(と呼び捨てにしては失礼な、イームズ博士。IAADP設立メンバーにして現会長)から「カンファレンスのパネルディスカッションに参加しないか」との申し出が。IAADPは現在約2000人の補助犬使用者が所属している国際団体…というと凄そうだけれど、とてもフレンドリーで、毎年のカンファレンスも楽しい。そのカンファレンスで一度ぐらい、発表する側になってみるのもいいかな。
 今回の開催地がアリゾナ・フィニックスで、懐かしいツーソンの近くだということと、カンファレンスのホストが私もよく知っているフィニックスの「ハッピーテイルズ」の人たちであることも、私にとっては魅力的。懐かしい人たちに会えそうだ。
 年齢から考えて、ニッキーがカンファレンスに参加できるのは、多分これが最後だと思う。だからこそ、最後の楽しい思い出を作りたい。
 そんな訳で、思い切って今回、海外旅行に行くことにした。AWDSAからは、痔先生とケンちゃんファミリーと私とニッキーというメンバーで、ニッキーの体調管理は痔先生にも手伝ってもらおう。

 と書くととても簡単に見えるけれど、沢山悩んで、懐かしいアリゾナに旅行することを決めた。
 フィニックスでのカンファレンスが終わったら、3日だけツーソンに滞在する。96年、介助犬との暮らしを望んで初めてトップドッグを訪ねた時に泊まったのと同じホテルを予約した。このホテル、留学中に住んでいたアパートと近く、クレイクラフト通りを通るバスにすぐ乗れるし、両隣がスーパーとペットショップという、私達には最高の立地でもある。
 題して「アリゾナラストツアー」。ニッキー、思い出のグラウンドで、満足するまで遊ぼうね。


■2005/01/06 (木) 快適なクッション

 来週旅行なので、あれこれと必要なものもあり、新宿のハンズで買い物。でも、旅行用品よりもついつい、新しい車椅子に必要なものを探してしまった。車椅子が新しくなると結構物入りなんだと、今ごろ気づく。
 今までの車椅子と今度の車椅子は、基本構造からして違う。メインフレームの形とパイプの直径が違うから、今までのように疲れた時に車椅子にリードを固定出来なくなってしまった。サイズの大きいカラビナを使えば何とかなるかと思ったけれど、あまり大きなサイズがなかったので断念。それから、バルブの形が違うから、空気入れも新しく買わないと。これは自転車売り場で手ごろなものが見つかった。
 新しい車椅子に取り付けて使えるリードを探してペット用品の売り場へ行くついでに、家具コーナーでクッションを物色した。今のものより微妙に薄いクッションが欲しいけど、車椅子業者で買うと高くつくので、ここで探そう。
 今使っているクッションを預けて、似たようなものを探して貰っている間、売り場の人は、「これ敷いて待っていてください」と、同じく厚さ5センチのスポンジっぽい物体を貸してくれた。固めのウレタンにじんわりと身体が沈み、なじんでいく。低反発素材、これは快適! せっかく今のものと近いクッションを探してくれた店員さんには申し訳ないけど、「これ! これを、このサイズでオーダーできますか?」と身を乗り出して聞いてしまう私だった。
 昔々、「少しでも歩けるなら、血が出るほど努力して歩け!」「車椅子になったらバスも電車も乗れなくなる、運転できないのだから何としても杖で歩け!」と言われた時代があった。真に受けて、必死に歩いて骨を変形させ、怪我も沢山した私。
 健常者にとって何でもない「歩行」「移動」に、障害者だけが努力を求められるとか、車椅子を使っている人がバスや電車に乗れないのが当たり前とか、今思えばとんでもない。快適に、安全に車椅子で行動できるようになった今、時代が変わったなぁと感じる。
 痛みと疲れと行動範囲の制限、そして転んで怪我をする不安から私を解放してくれた車椅子。ニッキーと一緒に颯爽と走る喜びも教えてくれた車椅子で、もっともっと快適に、楽しく歩いていけるといいな。それはわがままじゃなくて、ごく当たり前のことだよね? 申し分なく快適な低反発クッションに座り、そんなことを思う。


■2005/01/05 (水) 副業仕事始め

 年末年始を家でじっとして過ごした私達、今日は以前にも何度かお邪魔したことのある某専門学校で、例によって痔先生の講義のお手伝いに参加した。ニッキーは久しぶりに電車に乗ってお出かけなので、楽しそうだ。
 私の日常の介助という本業の他に、時々あるニッキーの副業の、今日は仕事始めといったところ。
 おかま同士で何故か仲のいい介助犬ケンちゃんと一緒に、ちょっぴりだけ実演をする。痔先生がコンビニのおにぎりとペットボトルを用意していて、買い物の設定でおにぎりをそっと運び、ペットボトルを運んで冷蔵庫にしまうためにドアを開けた。冷蔵庫のドアを閉める時、「クローズ・ザ・ドア」でなくわざと「開けたらどうするの?」と声をかける。ニッキーは言葉が変わっても状況を判断して、冷蔵庫のドアを閉めてくれた。こんなちょっとしたことで、見ている人には好評だったりする。
 命令どおりにきびきび動く犬ではないけれど、ニッキーは普段私の生活全般でいろいろ働いているから、経験値は高い。やわらかいものや壊れやすいものをそっと運ぶコツとか、私のちょっとした仕草を判断することとかは、さすがに上手だ。
 そんなところを人に見てもらえたらいいな、と思う。あれもこれも出来る犬だから素晴らしいのではなく、息の合う相棒がいてくれることが安心感や自信をもたらしてくれることを伝えられたら。ケンちゃんのパパも「いちばんは、何をしてくれるとかではなくて、安心感があること」と言う。
 あまりやる気なさそうに実演を終えて、早速寝ているニッキー。こんなニッキーがきっと今年もたくさんの出会いを連れてきてくれるだろう。出会った沢山の人の大半はきっと、「こんな気楽そうな普通の犬が介助犬?」というだろう。それでもいいから、今年もマイペースに行こうね。


■2005/01/03 (月) 残った雪

 ニッキーの排泄の始末をしながらふと見ると、私の目でも見えるくらいの星が光っている。マイナス何等星とかのレベルの星なら、調子がいいと見えるのだ。せっかく星が出ているんだから、と妙な理由で深夜の散歩に行く。
 家の前の歩道の雪はほとんど溶けているものの、歩道と車道の境目にはかき氷状にまだ残っていた。角を曲がったいつも通る道は、日当たりが悪いから全体にかき氷が。車椅子では通りづらいけれど、このくらいだったら行けるかな、と考え、「よし、メリーちゃん(突然車椅子に命名)、初めての試練だ!」と訳の分からないことを言いながら、雪の残る道を歩いた。
 ニッキーは白く雪の残った道を見て当然行かないと思ったらしく、家に帰る道の方に方向転換しようとしたが、私が車椅子を漕ぎ出したら嬉しそうについて来た。残った雪の匂いを時々かぐのは、あまり行儀がよくはないけど、仕事中じゃないんだし、私も遊んでいるからいいや。
 大きな道に出るまで、しばらくはわざわざ雪の残った道を選んで歩く。もう10日以上乗っているから、新しい愛車の動きにもだいぶ慣れてきた。私が慣れるのと一緒にニッキーも慣れてきている。段差に引っかかって「あっ転ぶ!」という瞬間(本当は転ばないはず)にも、私が騒がなかったらニッキーも落ち着いている。そんなものなんだね。
 調子に乗って、更に雪がたくさん残っている歩道にトライしてみた。さすがに車輪が埋まるけれど、そこを強引にかき分けてざくざく歩く。敢えてニッキーの助けは借りずに頑張ってみた。ニッキーはニッキーで、何故かしっぽをぶんぶん振り、楽しそう。途中でコンビニに寄ったりして、結局3時間ぐらい雪の残った場所を歩き回った。
 正月早々、何だか意味のないことをして遊んだ私たちだった。でも楽しかった。


■2005/01/01 (土) おめでとう、そしてウンの付きそうな話

 元日はニッキーの誕生日。シニアフードに変えた7歳、獣医さんに老犬宣言された8歳を過ぎ、今日で9歳になった。ニコラスさん(せっかくだから本名)、誕生日おめでとう。
 元気なニッキーが、あっという間に老犬になっていく。分かっていても受け容れられず、7歳以降は誕生日が来ると淋しかった。でも今年は違う。無事に誕生日を迎えられた喜びのほうがずっと大きい。去年生きるか死ぬかの大騒ぎがあったから特にそう感じるのかな。生きていてくれて、そばにいてくれて、一緒に誕生日を祝わせてくれてありがとう、ほんとにありがとう。
 昨日の雪が残った歩道は雪国状態、車道も汚れたシャーベット状の雪の上にタイヤの跡が凍っていた。アパートの雪のないコンクリートの通路を通って、ポストを見に行くだけでも大変だった。雪がないように見えて実は、残った水分が薄い氷になっていたのだ。いつもの杖では無理だから、数年ぶりにロフストランドクラッチを出した。松葉杖の親戚のような、アルミ製のごつい杖。これを両手について、久しぶりに本格的な杖歩行(?)で、時間をかけてポストに行った。
 トイレコーナーで雪景色と私の様子を見ていたニッキーは、散歩はないと判断して、いつもは運動しないと出ないうんこを一生懸命出そうとしてくれた。排泄ポーズのままちょこちょこ前に進み、しっぽを震わせてしぼり出す。頑張る! 踏ん張る! 気張る! やがて立派なうんこが雪の上に。
「グッド!」と言いながら私は内心、雪の上のうんこ回収をどうすればいいか悩んでいた。車椅子をすれすれまで近づけて車椅子を支えに拾えばいいのだが、こんなに雪があるとうまく行くかどうか…新品の車椅子でうんこ踏みたくないし…。するとニッキー、はっと思い出したようにコンクリート部分に戻ってきて、残ったうんこはコンクリートの上に出してくれた。なんて物分りがいいんだろう、さすが9歳?
 いつかは名犬になると思っていて、結局名犬にはしてあげられなかったけれど、ちょっとしたところで気を遣ってくれるニッキー。私の気持ちにぴったりと沿ってくれる相棒になった。
 名犬じゃなくても、今のニッキーが私にとっては最良の相棒。だから、元気に新しい年を過ごして、この先もっと何度も誕生日を迎えられますように。
 名犬じゃないニッキーと優等生じゃない相棒そのままに、背伸びせずに楽しく今年を過ごせますように。


(C)Yuki+Nicholas, http://blackdog.whitesnow.jp/