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くろいぬ日記

黒犬ニッキーとその相棒、ささやかにしあわせな日々。

2005年2月の日記

■2005/02/23 (水) 苦手

 小学校を訪問して、4年生の生徒達と父兄の方々に、体育館でお仕事を見てもらった。前回苦労したスイッチも一発成功! でも…今回は何故か電球が取り外されていた…。せっかく成功したのに。
 今回大変だったのは、ドアだった。体重が軽く、口でドアノブを操作するジロー君は問題なくドアを開けたけれど、大きなニッキーが立ち上がって前足でがしがしドアノブを回していたら、なんとねじが1本外れて飛んでしまった。ビニールシートの上にねじが落ちた音で、私もどの辺りにねじが落ちたか、それからねじの大体の大きさも分かった。
 ニッキーもねじが落ちたことに気づいて、自分から落ちたねじを拾おうとする。小さなものを拾うのはニッキーの得意科目だ。コインもヘアピンも安全に拾い上げることが出来る。だから何の心配もなく、ニッキーに任せておいた。
 でもニッキー、意外にもねじをなかなか拾えない。器用な口にそっとくわえるものの、何か変な味がするのか、舌に嫌な感触があるのか、気持ち悪そうに軽く頭を振って落としてしまう。
 確かツーソンにいた頃、似たようなねじを拾ってもらった記憶があるのだけれど、材質が違うのか、どうもこのねじは苦手なようだ。ニッキーはそれでも、自分でやり始めた仕事をやめなかった。落としてもまた拾おうとする。
「もういいよ、ニッキー、リーヴ・イット(放っておきなさい)」ニッキーが諦めずに何度も拾おうとするのを見てから、コマンドをかけてやめさせた。嫌だから拾わない、というのは困るけれど、ニッキーはちゃんと拾おうとしていたし、繰り返しトライする意欲があった。だからそれでいい。ニッキーの頭を「グッド!」と撫でた。
 物を拾ったり運んだりすることは、最初から得意だったニッキー。柔らかいものをそっとくわえることも、金属をくわえることも、壊れやすい眼鏡やカメラ付きケイタイを上手に運ぶことも、簡単に覚えてしまった。そんなニッキーにくわえるのが苦手なものがあったなんて。
 7年近く一緒にいても、まだまだ知らないことがあったんだ、と思う。私の知らないニッキーが、これから先どのくらい現れるんだろう。苦手なねじで苦労したニッキーにはちょっと申し訳ないけれど、新しい発見が嬉しいような気もした。


■2005/02/21 (月) 検疫終了

 アリゾナ旅行から帰国して1ヶ月が経ち、今日自宅まで、動物検疫所の人が来てくれた。
 検疫期間は書類が揃っていれば14日間だけれど、今回私たちは、あえてUSDAのエンドースメントを取得せずに4週間を自宅検疫で過ごした。いろんな事情や手続きがあって、動物検疫って本当に大変なのだ。新制度になって更に大変なのだけれど、その話はひとまず置いておいて。
 型どおりの健康チェックをし、書類を作って、無事検疫が終了。これまで3回お世話になり、昨年偶然イベントでも再会したSさんがやって来ると、ニッキーは早速しっぽを振ってお出迎えした。
 Sさんは白衣姿になり、お手をしたりして落ち着かないニッキーに聴診器を当てたり、唇をめくって口の中をみたり、目を覗き込んだりし、「白髪が増えたねぇ。でも、肺も心臓もいいね」と言う。もちろんこれだけで犬の身体の全てが分かるわけではないけれど、ニッキーの調子がいいと言われると、私もほっとする。でも、お客さんを迎えた嬉しさにテンションが上がったニッキー、心臓の鼓動がちょっと早かったそうだ。まったくもう、いい年をして…。
「また今度…」という挨拶に、「いえ、この子の海外旅行はもう最後でしょうから」と答えて、少し淋しくなる。「多分最後」の海外旅行と検疫の記念? に、ニッキーは書類をくわえてSさんと写真を撮影。こうして正式に検疫も終了した。
 9歳まで海外旅行を楽しんで、旅行先でボールを追いかけて駆け回ったり、帰国後も何の問題もなく元気に過ごしていられるということに、感謝しなきゃね。


■2005/02/20 (日) 急病?!

 夜のこと。パソコンに向かっていると、気づかないほどそーっと、ニッキーが私のひざに鼻を寄せて、控えめに何かを訴えていた。あまりにもそーっとだったので、しばらく私は気づかなかった。ふと手を止めた時気づいて、「どした?」と聞いてみたが、ニッキーはさっさと自分の場所に行ってしまった。
 そんなことがあってから数時間後。突然ニッキーが、定位置のベッドの上で「ごえっ!」と妙な声を出した。すっかりオヤジ化した彼は、時々痰を吐いたりするのだが、その時の声とも少し違っている気がする。
 振り返って目が合うとほとんど同時に、ニッキーはベッドから飛び降りてすり寄ってきた。具合が悪いのかも…不安になった私は、まずニッキーの身体に触れて体温を確認、胃の辺りが膨らんでいないことを確認、それから、身体のどこを圧しても痛がらないことを確認。
 更に、食欲を確認するために、「ごはん、食べる?」と声をかける。いつもならハウスに飛んで行って食器の前におすわりする言葉だ。でも、ニッキーは私に身体をぴったり寄せたままで動かない。ニッキーの食欲がないなんて、大変!! 夜間に対応してくれる動物病院に電話しよう。
「にっちゃん、しっかり!」ととにかく励まして…あれっ?
 何とニッキーのしっぽは、全開にぐるぐる回転するほど振られていたのだった。何のことはない、久しぶりにまた、甘えん坊病になっていただけだった。さっきの妙な声も「あう〜ん」といういつもの甘え声を出そうとした瞬間に、同時に咳き込んでしまったようだ。
 何事もなくてよかった。でも、ニッキーをちゃんとかまっていなかったのかな、と反省。
 ニッキーの健康を考え、今後のことも考えて、以前よりいろいろ手間もかけているから、それなりに飼い主業を全うしていると思っていたけれど、そういうことはニッキーに直接は伝わらない。ニッキー自身は相変わらず、一緒にくっついて過ごすことや、優しく撫でる手や、意味は分からなくても静かに語りかける声を求めているんだろう。それも、若い頃以上に。
 甘えん坊病のニッキーを改めて撫でると、ひっくり返ってお腹を出しながら、前足でしっかり私の手を押さえてくる。身体だけでなく、ニッキーの心もいたわってやろう、と思った。


■2005/02/19 (土) プレッシャー

 オソロシク寒い日、AWDSAのメンバーとイベントに参加した。本番直前、控え室で豪華なお弁当に感動しながら、「で、何話そうか…」と相談する、計画性のないメンバー達。でも、本番に強いのか、それなりに講演とデモをこなした。
 私とニッキーもデモに参加。携帯電話のストラップだけをくわえて運ぶとか、取っ手を回してドアを開けるとか、冷蔵庫からペットボトルを持ってくるとかを披露した。そこまでは順調だったのだけれど、最後に壁のスイッチを押すのが、意外な難関だった。
 押すことは出来るのに、なかなかスイッチが動かないのだ。アメリカで練習した縦型のスイッチと違って平たい横型のスイッチだから、苦手なのかな。我が家は紐式のスイッチだし。
 デモ用スイッチにはちゃんと点いたり消えたりする電球がついているので、押したふりでごまかすことが出来ない。ニッキーの利き手の左手(というか前足)がうまくスイッチを押せるように、微妙に車椅子の位置を変えたりしてみたが、それでも電気はつかなかった。
 何度も失敗すると、ニッキーもやる気を失ってくる。実生活での「本番」なら、失敗してもニッキーをほめちぎってやる気を出させるところだ。私は「グッド! がんばれ、ニッキー!」と応援しながら続けるが、それでもうまく行かない。結構なプレッシャーである。
 会場の子供たちが「頑張れ!」と声を合わせて応援していたが、とうとう最後に痔先生が、「じゃあ、もう1回だけやってもらおうね」と言い、それでも電気がつかないと、「あ〜」という声が広がった。
 ところがニッキーは、動作をやめずにもう一度スイッチを押し、今度は見事に電球が点灯した。一度がっかりした子供たちの惜しみない拍手を受け、機嫌よくしっぽを振るニッキーさん。
 私達のデモでは必ず、「犬は自分から喜んで仕事をしています。ユーザーは決して怒ったりせず、犬を信頼してできるまで待ちます」と言う。これがいちばんのプレッシャーかも知れない。途中から笑顔が消えていた私は、無事終了して打ち上げの席で、ステージ横で見ていたS子さんにひと言「地が出てたよ!」と突っ込まれた。
 デモ犬でないニッキーは、デモが出来なくてもいいし、デモ向きのきびきびした動きも必要ないと思う。でも、どんな時もニッキーを信頼する、という基本を思い出すために、時々はデモに参加しようかな。


■2005/02/17 (木) 早足

 深夜、散歩も兼ねてニッキーとコンビニへ。寒い割に私の調子はよかったようで、いつもより楽にすいすい車椅子が動く。嬉しくなって必要以上にスピードを出し、ちょっとの段差も強引に乗り越えて走った。
 生まれた時からずっと「走る」感覚を知らない私は、時々調子よく車椅子でスピードを出せると、それだけでわくわくする。早足の方が快適なニッキーも、軽快なトロットでついて来た。微妙な下り坂のあるコースを選んで、颯爽と走る。
 大きな道に出た時。周りが明るくなってニッキーの姿がよく見えたら、何かいつもと違う…なんと「介助犬」のカードがなくなっていた。ケースがどこかで割れてしまったようだ。ニッキーのケープには、安全ピンとプラスティックの破片が残っているだけ。
 一応、表示をしないでお店に入るのはまずいかなぁ。ちょっと悩んだ末、法律が出来る前から許可を取って入店している、少し遠いコンビニまで行くことにした。そこなら事情を説明すれば大丈夫なはず。その予想通り問題なく買い物を終えることができた。
 カードは予備を持っているし、悪用されることもなさそうだから、まぁいいや、と思ったものの、万一誰かが拾って、記載されている認定団体に「第*号の介助犬のカードが落ちていました」と電話してしまったら、怒られるかも。
 かくして、行きは軽快に車椅子を飛ばした道を、帰りは超スローで(微妙に上り坂だし)、きょろきょろ周りを見回しながら帰ることとなった。視力が悪いから多分見えないだろうと諦めつつ探していたら、暗い路地でニッキーが急に頭を下げ、車椅子を止めたらそこにカードが落ちていた。
「珍しく探し物を見つけてくれたの? グッドグッド!」多分「自分の物が落ちているから、拾わされる」と思っただけだろうけれど、とにかくお礼として、もう一度車椅子を思い切り漕いで、早足させる。「ハップアップ(急いで)! ハップアップ!」と明るい声で励ましてやると、機嫌よくしっぽをあげ、車椅子よりやや前に出て楽しそうに走る。普段は滅多に早足にならないから、たまに走れるのが楽しいんだろう。
 しばらく走ったら、ニッキーは満足したきらきらの目で見上げてきた。カードを落としたのは失敗だったけど、そのおかげでニッキーと、遠回りしたり、走ったり。ちょっといい時間を過ごせたかな。楽しかったね、ニッキー。


■2005/02/16 (水) 立ち直る

 東京でも、我が家の辺りは雨が雪になって、かなり辛い天気だったけれど、どうしても行かなければならない用事があって、出来るだけ寒さと水に強い服装で出かけた。
 行き先での目的は、一応面接というやつだったのだけれど、「障害が悪化したから**社を退社したんですか? 車椅子の人も勤めている会社じゃないんですか?」という言葉に、何だかがっかりした。
 あの会社、車椅子の人たちは全員マイカー通勤だった。ラッシュ時の電車とバスを乗り継ぐのとは、やっぱり違う。目が不自由で…と最初に言っているのに、車で通勤できないことに気づいてもらえないのかな。一応、障害者の就労相談のはず。
 寒さとがっかり感で、何だかテンションが下がってしまった私。以心伝心のニッキーもテンションが低い。元気を出そうと、気になっていた初めてのお店に入ろうとしたら、大きな段差があって断念。さらにテンションが下がるふたりだった。
 ところが。電車の中で何故か急に機嫌よくしっぽを振って私を見上げるニッキー。突然のアイコンタクトにびっくりして、周りを見回すと、どうも怪しい荷物があった。四角い形といい、手作りの布カバーに猫の柄が溢れているところといい、多分、向かい側の座席の人が足元に大事そうに置いている荷物は、猫の入ったキャリーバッグだ。
 猫の大好きなニッキーは、それでも過剰に反応することなく伏せている。でも、さっきまでのテンションの低さとは大違いだ。時々私の顔を見上げてみたり、猫のいる方をじっと見て、控えめにしっぽを振ってみたり。そんな様子を見ていたらおかしくて、電車の中でひとりでにやにやしてしまった。
 自宅の最寄り駅に着くと、雪混じりの雨もやんでいた。ニッキーさんは猫に遭遇したことですっかりさっきまでのテンションの低さを忘れ、私も何だかどうでもいいような気分になった。
「ニッキー、タクシーをやめて、歩いて帰ろうか。猫がいるかもよ」と言ったら、ニッキーはしっぽを回転させて賛成した。愚痴りたいことも多いけど、何とかやっていけるかな。


■2005/02/12 (土) おならと笑い

 胃捻転以来、ニッキーのげっぷとおならには敏感になった。出なければ出ないで、胃腸の動きが悪いのかと心配になるし、出れば出たで、ガスが溜まっているかもと心配になる。
 今日は、私もあまりお腹の調子がよくなかったので、用事を済ませて帰宅する前に、友人宅に上がりこんでトイレを借りた。友人の住むマンションには、ちゃんと玄関に車椅子用のスロープがあったけれど、傾斜が急なので腕力のない私には登れず、別の友人に介助してもらった。
 そして、同じスロープを降りる時のこと。友人に支えられて狭いスロープを後ろ向きに降りるので、ニッキーのリードが絡んだり、介助してくれる友人の邪魔になったりするのが少し心配だった。スロープの上の邪魔にならない場所にニッキーを待たせておくことにする。「ニッキー、シット、ウェイト(座って次の指示を待ちなさい)」
 私と離れて待つのが何より苦手なニッキー、少し待つだけなのに不満そうな表情だ。やや低めの声で指示を出すことで落ち着かせ、ちゃんと待てよ! のメッセージを伝える。ニッキーはとにかく指示通りきちんと座った。
 友人が私の車椅子を後ろから支え、ゆっくりとスロープを降り始める。その瞬間、まるで狙ったように「ぷぅーーう!」という間延びした音が。そう、ニッキーの長いおならである。友人は私の後ろで笑い出した。脱力して手を放さないでね。
 私にとって、ニッキーのおならは真剣な健康チェックのポイントだし、ニッキーはよくおならをするから慣れてしまって、最近ではもう笑ったりしないのだけれど、友人が笑い出したらその笑いが私にも伝染して、ついへらへらしてしまう。
 私の表情が緩んだ瞬間を、ニッキーは見逃さずに立ち上がった。ちょっと厳しい「ウェイト」の指示が解除されたと勝手に判断したようだ。もう一度同じ指示を出して元の姿勢に。
 何でもない出来事だけれど、友人の笑いが私に、そして私の笑いがニッキーに伝染したのがちょっと面白かった。でも、私が笑うとニッキーも笑ってくれるなら、それもまた以心伝心。いいことだよね?


■2005/02/09 (水) バリアフリー雑感

 大学時代、通学に使っていた某駅を久しぶりに訪れた。数年前に工事をしていたのは知っていたけれど、エレベーターが設置され、階段がなくなり、反対側の出口にも楽に出られるようになって、バリアフリー化していた。
 トイレを使い、自力でホームまで行く。両手に杖で、必死に階段を登ったあの頃に比べて、何と楽になったことか! 昔の自分に申し訳ないほど安全・快適。
 さて、そんな感じで本日出かけたのは、ネット友達のゆんみさんと聴導犬サミーの講演。シャーリママとコーギーのシャーリ、そらパパとちょっとシャイなそら君にも会うことが出来た。
 ゆんみさんは、7年以上アメリカで生活し、アメリカでサミーと出会っている。アメリカと日本の、犬にとっての環境の違いや、障害者に対する感覚の違いを体験しているから、1年半とはいえアメリカで暮らし、介助犬トレーニングを受けた私たちと共通することもあって、直接会うのは2度目なのに、何だかとても楽しく共感しあいながら過ごせた。
 聴覚障害者の中でも、先天的に耳の聴こえない「聾者」である彼女は、聴こえない世界を「私には当たり前」と言う。聴こえないことが不自由だからとか、辛いからではなく、聴こえない世界をより楽しく生きるために聴導犬サミーと暮らすことを選んだのだ。
 子供の頃から脳性まひと弱視の世界を体感してきた私も同じ。障害を克服するためではなく、障害と共に生きるために、そして、障害を持った自分を見つめなおして受け容れるために、介助犬ニッキーとの生活を選んだ。

 帰り道、また楽々とエレベーターを利用しながら、ふと思う。
 私自身が子供の頃から時間をかけて、じたばたしながら自分の障害を受け容れている。今だってまだまだ受け容れられない気がする時もある。それと同じように、「社会」が「障害者の存在」を当たり前に受け容れるのにも時間がかかるだろう、と。
 駅はバリアフリーになったけれど、学生時代によく入った本屋もアクセサリー屋も喫茶店も、段差があって今の私には入れなかった。まだまだ途上なのだ。


■2005/02/07 (月) 朝の光景

 病院に行くために、また実家に泊まった。実家でのニッキーのハウスは、古くなっているとはいえ、人間用のふかふかの羽根布団なので、自宅でせこいマットに寝ているのに比べて、とても快適そう。ニッキーは自分からハウスに行きたがる。最近はさらに、豪華ハウスをファンヒーターで暖めてあげることもある。
 今朝は、2階から降りてきた遠慮のない連中が、ニッキーの快適なハウスに乱入。リズとちーである。気持ちよく寝ていたニッキーは、リズの強引な挨拶(ほとんど頭突き、それも連打)に無理やり起こされた。そして、ファンヒーターの温風があたる位置に、ちーが割り込んで寝てしまった。
 困った顔で私を見上げるニッキー。でも、ニッキーとリズとちーがくっついている光景がかわいいので、小声で「ステイ!」と指示して、携帯カメラで撮影した。リズがすぐに私に近づいてきてしまって、3匹の写真は撮れなかったけど、「そうそう、グッドステイ」と褒められて、ニッキーがしっぽを振ると、ちーがニッキーのしっぽにじゃれついて、さらにかわいかった。
 今日は、前回の診察で「ちょっと心配」と言われた目の診察の予定で気が重かったが、朝から和む。
 リズとちーはギギと一緒に部屋を出て行き、入れ違いにちょびがやって来た。我が家の大御所・貫禄の老猫ちょび様は、ヒーターの温風のいちばんよく当たる位置に、当然のように向かう。
 ちょびはニッキーのハウスの端に丸くなり、その気迫に押されて? ニッキーは一生懸命ハウスの反対側の端っこで小さくなった。ちょびは、大きなニッキーのことを実はちょっとだけ怖がっているので、ニッキーとちょびが一緒にいることはめったにない。ハウスの両端に不自然に離れているけれど、珍しいツーショット!
 優しいニッキーと呑気な猫たちの光景が楽しくて、携帯のメモリがいっぱいになるまで撮影した。


■2005/02/05 (土) 固まる

 この数日、どうも「緊張」、つまり身体が突っ張ることが多い気がする。寒いせいなのか体調なのか、その両方か。
「まひ」=身体が動かないということは、比較的理解されやすいけれど、「不随意運動」や「緊張」=本人の意志と関係なく身体が動いたり、固まったりする、というのは、障害を持ったことのない人にはあまり想像できないらしい。普段力のない私が不随意運動の時だけ力強かったりするものだから、「ほんとはもっと動けるんじゃ…」なんて心外な誤解を受けることもある。
 誤解されやすい不随意運動、実はニッキーも誤解して、私と同居を始めた頃は、私の手足が突っ張るたびに「叩くの?」「蹴るの?」と誤解して私の側から急いで離れていた。
 今は、私の身体が微妙に突っ張ったり、固まったりしていると、何故かニッキーは真面目になる。不随意運動は、コントロールしようと意識するほど激しくなり、人前や大事な場面でいつも以上に起こるから、ニッキーは私の不随意運動で「大事な緊張する場面」を理解するらしい。そして、身体がうまく動かない時ほど、気遣うようにこちらを見ることが多くなる。このところ妙に反応がよかったのも、私の緊張と不随意運動のせいだったのかも。

 今朝はニッキーのごはんをあげようとして、伝い歩きで移動していたら、上げた足がそのまま固まって下ろせなくなった。満面の笑みでごはんを待っていたニッキーさん、固まっている私を迎えに来て、側に座っていてくれた。私を心配しているのではなく、ごはんを早く貰おうと思っているんだろうな。
 それでも「早く足を動かさなくちゃ」と焦っていた私は、ニッキーの愛情と食欲に満ちたまなざしを見て、つい笑ってしまい、それをきっかけに足も動いた。ニッキーは私の足が動くのを見るなりハウスに駆け込み、ごはん! と主張。
 突っ張ったり固まったりする面倒な私の身体。でも、やっぱりこの身体と共に、呑気なニッキーと生きていくんだなぁ、とふと思う朝。


■2005/02/03 (木) 活躍

 今日のニッキーはやる気があった。目薬が効いて目の痒みが治まったせいか、それとも何かの拍子で気が向いていたのか、しっぽを高くあげて意欲的に仕事をしてくれる。
 コンビニに買い物に行き、歩道の段差で、「タグ(引っ張って)」と声をかけ、車椅子に取り付けた紐を引っ張ってもらった。でも、私の方が寒くてうまく身体が動かないので、タイミングが合わない。ニッキーの力だけでなく、私が車椅子のバランスをコントロールしないと、段差は超えられないのだ。
 ニッキーは、失敗したら自分から紐のくわえ方を変えて、再度力いっぱい引っ張ってみたり、微妙に角度を変えて引っ張ってみたり、積極的に頑張ってくれた。車椅子は無事、段差を乗り越える。
「グッド・ジョブ! ありがとう、頑張ったね」
 レジで財布を落としてしまった時も、私が何も言わないのにさっと拾い、首をいっぱいに伸ばして楽な位置で私の手に渡してくれた。
 帰宅して、フードを食べ終わったニッキーは、定位置のベッドの上で丸くなった。気持ちよさそうな寝息が聞こえていたその時、私は急に咳きこんだ。のどが弱い私は、特に寒くて乾燥した時期には、ものすごく咳が出る。咳と同時に全身が突っ張ってしまったり(さすが脳性まひ)、食べたものを戻してしまうことも。
 今回もそんなひどい咳で、止まったと思うと繰り返し、吐きそうになった。手も足も突っ張って、金縛り状態。水を飲むと少し治まるはずなのに、ティッシュも水も取れない。ニッキーを呼んで、ティッシュと水のボトルを持ってきてもらおうと思ったが、よく寝ているから、起こすのもかわいそうかな、と少し迷った。
「カム」と呼べば「仕事ですか?」とやって来るけれど、「おいで」や「来て」だと来ないこともあるニッキー。日本語で呼ばれる時は絶対ではないと思っているようだから、あえて一度だけ、「ニッキー、来て」と日本語で呼んでみることにした。来なければそれでいい。
 ところが、咳と共に小声で「ニッキー…」と言いかけただけで、ニッキーはベッドから飛び降りて駆けつけてくれた。咳き込みながらの指示をちゃんと聞き分けて、ボトルやティッシュを持ってきてくれ、咳が治まるまでじっと私を見守っていてくれた。
 咳き込みながら、そこにニッキーがいてくれることを心強く感じていた。
 ごく普通の日だけれど、大活躍だったね。本当にありがとう、相棒。


■2005/02/01 (火) 目薬

 いつもいつも私に身体をこすりつけて甘えるニッキーだから、気づくのが遅れてしまったかもしれない。昨日、何度も私の服に顔をこすりつけてくるので、ふと見ると、両目ともたれ目のまぶたも白目のところも、真っ赤に充血していた。
 そういえば、おとといは一緒に出かけたけれど、どうも集中力がなく、元気もない感じだった。目が痒かったか痛かったかしていたのかも。草むらに顔を突っ込んで傷つけたのかな? それともアレルギー? 異物が入って眼球を傷つけていたらどうしよう…?
 ニッキーは目をしょぼしょぼさせて涙を流している。前足で猫のように顔を洗おうとしたり、カーペットに顔をごしごししたりしようとするのを、そのたびに「我慢してね、余計に痛くなるからね」と止めた。言葉の意味は分からなくても、ぐっと我慢してくれる健気なニッキー。
 炎症を抑える人間用の目薬をさそうと思ったけれど、一応獣医さんに診て貰った方がいいだろう。もう動物病院は閉まっていたので、心配しながら就寝。

 今日の午前中に、いちばん近い病院に行った。思ったより軽い状態だったようで、とりあえず、炎症とかゆみを抑える注射をしてもらい、目薬を貰う。「手が不自由だと大変でしょうけど、1日4、5回差してあげて下さい。今、ここで一度差しておきましょうね」と獣医さんが目薬をニッキーの両目に差してくれた。
 これで一安心、と気分が軽くなった。天気もよかったので、近所をゆっくり散歩しながら帰宅。
 で、貰って来た目薬は、名前は違うけれど、私が以前病院で貰っていた人間用の目薬と同じものだった。目薬は人間用と動物用で同じものを使うことが多い。リズもタンちゃんも、動物病院で処方された目薬は、私が病院から貰っている目薬と同じだったことがある。
 今回もやっぱり人間用の目薬でよかったんだ。私は、手が不自由でこぼしてしまう分を考えて多めに目薬を貰うので、炎症止めの目薬も余っている。家に余っている薬を使えばよかった、とけちくさいことを思った。
 でもまぁ、ニッキーが何事もなかったんだから、それでいいや。元気と安心は何にも代え難い。


(C)Yuki+Nicholas, http://blackdog.whitesnow.jp/